「個別の11人事件」は現実に起こせるか 「攻殻機動隊S.A.C. 2nd GIG」のゾクっとする話:アニメに潜むサイバー攻撃(7/7 ページ)
そう遠くない未来、現実化しそうなアニメのワンシーンをヒントに、セキュリティにもアニメにも詳しい内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)の文月涼さん(上席サイバーセキュリティ分析官)がセキュリティ対策を解説します。第3回のテーマは「攻殻機動隊S.A.C. 2nd GIG」です。
K: もしかして……YouTuber?
F: 意外にそんなところから、IT時代の独裁者、誰かにプロデュースされた偽りの英雄はやってくるかもしれません。なおクゼ自身は、この後、出島で9課の課長荒巻の生き別れの兄・洋輔に革命家として難民を率いる責任と、その詰めの甘さについて諭されています。彼はハッカーとして、そしてカリスマとしては優秀であり、未来と人の可能性は見えていても、現実的な政治能力は欠けていたという姿を見せました。1人として戦い、そして人が人としてできるキャパシティーの限界を示していたことに、何でもできるチートなヒーローのアニメとは違う、攻殻機動隊のリアリズムの素晴らしさを見せられました。
攻殻機動隊、幻の一冊
K: ふう……。今回は本当に重かったですね。
F: それが攻殻機動隊の世界ですから。こういった先進的なSF作品が示してくれる事件・事故の数々を、全て思考実験してその実現の可能性を検証しておくのは、特にサイバー系官僚の義務でしょう。私はそれが作品を生み出してくださった人々への敬意だと思います。万に一回ぐらいかもしれませんが、同様の事件が発生し、上から「これはどういうことだ!?」と聞かれたときに、即座に「こういうことだと思われます!」と答え、上が即断即決で対処できるように備えておくことはわれわれの職責です。そして20年以上も前から未来を予測し、問題を提起し続け、そのアイデアをくださる士郎正宗先生、ならびに攻殻機動隊のアニメシリーズ製作スタッフ、漫画家さんに感謝いたします。いつか機会があれば、リアルなハッカー像と青臭い正義感をテーマに、第1シーズンのアオイ君も取り上げたいと思います。
K: そうですね。心技ともに「これぞハッカー」ともいうべき人物ですし。
F: 余談になりますが、攻殻機動隊の漫画には、士郎正宗さんが描いた原作、衣谷遊さんが描いたS.A.C.第1シーズンの作品、そして大山タクミさんが「攻殻機動隊 ARISE」を描いたものがありますが、実はわれわれ内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)も監修に加わった幻のスピンオフが存在するという話が……。
K: え、えええええ!?
F: もしかしたら、物理媒体がどこかに存在するかも。
K: 攻殻機動隊の漫画やアニメ、それを全て見た上でそれを見ると?
F: あなたもウイルスに感染して、青臭い正義感を持ったハッカーになるかもしれませんよ。ふふふ。
「サイバーセキュリティ小説コンテスト」開催中!
K: ところで、3年前のサイバーセキュリティ月間は攻殻機動隊とのコラボレーションで、ポスターも製作されましたよね。
F: その節はスタッフさんに大変ご無理を申しました。前回も紹介しました「サイバーセキュリティ小説コンテスト」から、攻殻機動隊のように未来を指し示す作品が誕生してもらいたいと思っています。
K: 応募状況はどんな感じですか?
F: 現時点で230作品を越え、事前にカクヨム編集部から聞いていた情報から鑑みると、すごい盛況ですよ。正直サイバーセキュリティという限定したネタでこれほど作品が集まるとは思わなかった!
K: すごいですねぇ!
F: 締め切りまでにはまだ時間があります! 大賞賞金は100万円と角川スニーカー文庫からの出版を確約されています。作品応募よろしくお願いします!
K: 攻殻機動隊の次回作の発表もありましたし、今後楽しみですね!
F: コンテストも攻殻機動隊も、ぜひ皆の度肝抜いて、われわれが「これどうすんの?」と音を上げるような作品をお願いします!
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