改正著作権法が日本のAI開発を加速するワケ 弁護士が解説:「STORIA法律事務所」ブログ(5/7 ページ)
2019年1月1日に施行予定の改正著作権法は、日本のAI開発にどのような影響を与えるのか。弁護士の柿沼太一さんが解説します。
現47条の7本文但書に該当する行為はNG
まず、現47条の7本文但書に該当する行為、つまり「情報解析を行う者の用に供するために作成されたデータベースの著作物」を利用する行為は新30条の4本文但書に該当し、NGということになると思われます(平成30年4月6日衆議院文部科学委員会における中岡文化次長答弁)。
現47条の7本文が適用されて適法だった行為が違法となることはない
次に、国会付帯決議の内容からすると、現47条の7本文が適用されて適法だった行為が違法となることはないと思われます。
では、それ以外のケースで一般的に「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」とはどのような場合を指すのでしょうか。
もう少し掘り下げて考えてみましょう。
この論点については、著作権法の構造や、今回の著作権法改正のうち「柔軟な権利制限規定の整備」の背景にあると思われる思想を理解する必要があります。
今回の著作権法改正のうち「柔軟な権利制限規定の整備」の背景思想
権利制限規定の3層構造
これまで紹介してきた新30条の4や同47条の5の規定は、今回の著作権法改正の複数のテーマのうち「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備」に関するものです。
「権利制限規定」というのは、著作権者の権利を一定限度で制限する制度ですので、要するに「著作権者の許諾がなくても著作物を利用できるのはどのような場合か」という点に関する規定を整備したということになります。
今回の著作権法改正は2017年報告書の提言を具体化したものですが、この報告書は、権利制限規定を3つの「層」に分類し、当該3つの層について、それぞれ適切な柔軟性を確保した規定を整備することが適当であるとしています。
まず、現行法の規定をこの3層に従って分類するとこうなります。
次に、改正法の規定を分類するとこうなります。
このうち第1層については「著作物の本来的利用には該当せず、権利者の利益を通常害さないと評価できる行為類型」であって、今回ずっと説明してきた改正法30条の4はこの第1層に属する権利制限規定です。
では、第1層でいう「著作物の本来的利用」や「権利者の利益」とは具体的に何を意味するのでしょうか。
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