Zaif、70億円流出の前日に利用規約を変更か 法的に有効か弁護士が解説:「STORIA法律事務所」ブログ(3/3 ページ)
Zaifが70億円をハッキングされる前日に変更した利用規約は法的に有効なのか。AIと著作権に詳しい弁護士の杉浦健二さんが解説します。
改正民法では、利用者に有利な変更は事前の周知期間を要しない
改正民法においては、定型約款を変更するときは、効力の発生時期、変更する旨、内容、効力発生時期をインターネットその他適切な方法により周知させる必要があります(改正548条の4第2項)。さらに上記2の変更(合理的な範囲での変更)の場合は、変更の効力発生時期までに周知手続をとる必要があります(同3項)。これに対して上記1の変更(利用者の一般の利益に適合する変更。つまり利用者にとって有利となる変更)の場合は、効力発生時期までの周知手続は要しないとされています。
仮に今回のZaif利用規約のような改訂が民法改正後になされていた場合、消費者契約法上無効となる可能性が高い利用規約を有効となるように改訂したことが、上記1の変更(利用者の一般の利益に適合する変更)にあたるとすれば、変更の効力発生時期までに周知手続をとっている必要はなく、変更後の利用規約が有効に適用される可能性があります。
もちろん、改訂前は消費者契約法上無効となる規定だった以上、「損害の填補を保証するものではありません」と定めた利用規約への変更は、上記1の変更(利用者の一般の利益に適合する変更)にあたらず、あくまで効力発生時期までに周知手続を要する2の変更(合理的な範囲での変更)にあたる、とも考えられます。2の変更にあたる場合、周知から効力発生時期までどの程度の期間を置けばよいのかを定めた具体的な規定はありませんが、少なくとも本件のように変更とほぼ同時期に発生した損害について、変更後の規約が適用されることはないものと思われます。
本件の暫定的な結論
最後は少し複雑な話になってしまいましたが、本件はあくまで民法改正前に発生した事案です。今回のハッキング事故については改訂前のZaif利用規約が適用され、改訂前の規約のうち「当社は一切責任を負わない」と定めていた部分は消費者契約法に反して無効と判断され、「損害の填補を保証するものではありません」と定めた改訂後の利用規約は適用されないと判断される可能性が高い、というのが現時点での暫定的な結論となります。
著者プロフィール
弁護士・杉浦健二
ソフトウェアやシステム開発などのITビジネスにおいて必須となる契約書作成からトラブル解決までを企業の社外法務部としてサポートしています。STORIA法律事務所共同代表。ブログ更新中。
関連記事
- Zaifの仮想通貨流出、70億円に 当初発表から3億円拡大
仮想通貨取引所「Zaif」が不正アクセスを受け、仮想通貨が流出した事件で、被害額が約70億円とみられるとテックビューロが発表した。20日の発表から約3億円拡大した。 - Zaif、不正アクセスでビットコインなど約67億円相当流出
Zaifから約67億円相当の仮想通貨が流出。ホットウォレットがハッキングを受けたという。 - コインチェック、不正アクセスで仮想通貨「NEM」消失 約580億円相当
コインチェックが取り扱っている仮想通貨「NEM」の一部が消失したことが分かった。不正アクセスが原因で、5億2000万NEM(約580億円相当)が流出したという。 - モナコインへの攻撃、なぜ成功? 小さな「アルトコイン」襲う巨大なハッシュパワー
国産仮想通貨「モナコイン」が攻撃を受けた理由や、そのブロックチェーンの仕組みについて解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.