あなたはアンドロイドを殺せるか? 「Detroit: Become Human」で考えるAIと人間の未来(3/3 ページ)
プレイステーション 4向けソフト「Detroit: Become Human」では、人間そっくりのアンドロイドが登場する社会が描かれる。主人公のアンドロイドの視点を通して見えてくるものとは。
警察の捜査をサポートするために製造された男性型アンドロイドの「コナー」が、事件の重要な情報を得られるかどうかの瀬戸際に立たされる場面。重要人物から「情報が欲しければ目の前にいる女性型アンドロイドを銃で撃ち殺せ」と言われる。女性型アンドロイドは、こちらをじっと見ている。
コナーと共に捜査を進めてきたハンク警部補(人間)は、「そんなばかなことをする必要はない」と、これを止めようとする。しかし、任務遂行のために作られたコナーにとって、重要な情報を得ることは自身の存在意義にもつながる。
任務を全うするため、仲間であるアンドロイドを撃ち殺すのか。共に捜査してきたパートナーの感情をおもんばかり、銃を下ろすのか。常にこの板挟みに遭うのがコナールートの特徴だ。何を優先するのか。任務か、相棒か、自分の気持ちか。そんな選択の連続だ。
ちなみに、捜査中にコナーが犯人に殺されてしまうこともあるが、彼はアンドロイドなので次のチャプターでは新品のボディーになった2代目コナーが何食わぬ顔で登場する。アンドロイドは脳(メモリ)が無事なら、何度でも記憶を引き継いで生き返る。
Detroitのシナリオ分岐やエンディング数は膨大だ。人やアンドロイドの命を奪うかどうかという大きな選択だけでなく、誰に話しかけるか、かけないかといった細かな選択でもその後のストーリーに影響を及ぼす。日常生活と違うのは、何度も物語をやり直せることだ。まだ体験していない「あり得たかもしれない未来」に何度も挑戦できる。それが正しい未来なのかは誰にも分からないが。
AIと人間が共生する未来を、AIの視点で体験できるのがDetroitの魅力の1つ。その目にわれわれ人間はどう映っているのか。興味を持った方は、ぜひ体験してその目で確かめてみてほしい。
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