TBS「いらすとや」キャスター開発の裏側、深津貴之さんが明かす 「圧倒的な存在強度」「ディストピア作りたいわけではない」
TBSテレビのバーチャルYouTuberキャスター「いらすとキャスター」の開発裏話を、プロデュースを担当した深津貴之さんがnoteで公開した。
TBSテレビが公開したバーチャルYouTuber(VTuber)のニュースキャスター「いらすとキャスター」。フリー素材サイト「いらすとや」のイラストを使った“異例”のVTuberだ。その開発裏話を、プロデュースを担当したUXデザイナーの深津貴之さんが10月4日、noteで明かした。
いらすとキャスターは、ニュースサイト「TBS NEWS」の公式Twitterで10月1日にデビュー。いらすとやのイラストを使ったキャラクターが笑顔でニュースを伝える様子は、Twitterなどで大きな話題を集めている。
深津さんによると、いらすとキャスターの構想が始まったのは2017年後半のこと。深津さんらがTBS NEWSのデジタル展開を支援する中で、TBSテレビから「若者向けの番組を作りたい。一緒にやろう」と声を掛けられたという。そこで提出した企画が、VTuberの作成からVTuberによるニュース報道までを記録した「プロジェクトX的ドキュメンタリー」(深津さん)だ。
開発にあたって重視したのは、他のVTuberとの差別化。「VTuberの特性は生得的外見からの解放であるのに、みんな美少女に制約・集約される」(深津さん)として、あえて美少女とは異なる方向性を模索した。そこで(1)ど真ん中であること、(2)複数人で運用できる匿名性があること、(3)美少女キャスターや広告代理店系キャスターに負けない“存在強度”があること、(4)最初にやったもん勝ちであること――という要件で考え、いらすとやのイラストを使うことにしたという。
まずはいらすとやのフリー素材をベースに、2Dキャラクターアニメソフト「Adobe Character Animator」でプロトタイプを作成。TBSテレビへのプレゼンテーションで「まさかのOK」を勝ち取り、2017年末にプロジェクトを正式スタートした。
その後、「テレビ局のアセットを作るプロジェクトで、権利処理をしないままフリー素材として使うのは、道義上あるべきでない」として、TBSテレビからいらすとやの運営元にオーダーメイドで3体のバーチャル・キャスターのデザインを発注。最終的な実装は、TBSテレビが2Dイラスト立体表現ソフト「Live 2D」を使って行ったという。
当初予定していた時期(2018年3月ごろ)から公開が遅れ、「かなりVTuber戦国時代になってしまった」が、「当初の計画どおり、(いらすとやの)圧倒的な存在強度で埋もれずに済みました」と深津さんは振り返っている。
いらすとキャスターの公開後、ネットでは「人間のキャスターの仕事を奪うのか」といった声もみられるが、深津さんはあくまで「ディストピアを作りたいわけではない」という見方だ。いらすとキャスターは「テクノロジーによる報道の拡張」「ニュースキャスターという働き方の拡張」「チャンスの拡張」などを目指し、運用していくという。
深津さんは今後もいらすとキャスターの運営やアップデートに関わるといい、「政治やスキャンダル系ニュースでの運用はNG or 少なめの方向」「お茶の間がほっこりするニュース、みんながポジティブな議論をできるニュースを中心に、運用する。そんなアドバイスをしていきたい」とつづっている。
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