Cloudflareに発信者情報開示の仮処分 海賊版サイト対策、進展するか
東京地裁は、CDN事業者の米Cloudflareに対し、人格権を侵害するWebサイトにサービスを提供したとして、キャッシュデータの削除と発信者情報開示の仮処分を命じた。
東京地裁は10月9日、CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)事業者の米Cloudflareに対し、人格権を侵害するWebサイトにサービスを提供したとして、キャッシュデータの削除と発信者情報開示の仮処分を命じた。海賊版サイトのいくつかはコンテンツを配信するためにCloudflareを利用しており、仮に著作権侵害についても同様の司法判断が下れば、海賊版サイトへの対策が進む可能性がある。
CloudflareなどのCDN事業者は、配信元のサーバデータをキャッシュデータとして一時的に複製・保存することで、配信元へのアクセス集中を緩和している。多くの海賊版サイトはこの仕組みを利用し、CDN事業者を通じて日本のデータセンターからコンテンツを配信。CDN事業者が発信者情報を開示すれば、海賊版サイト運営者を特定できる可能性がある。
だが、今回申し立てを担当した山岡裕明弁護士によれば、Cloudflare側は「(配信元の)オリジナルデータにアクセス権限がないので削除はできない」「(配信元とユーザーを中継する)リバースプロキシにすぎない」などと主張していたという。
海賊版サイト対策を巡っては、インターネットサービスプロバイダー(ISP)が海賊版サイトのアクセスを遮断する「ブロッキング」の実効性が議論されているが、ネット上の権利侵害を多く扱う弁護士らから批判の声が出ている。今後CDN事業者に対し、著作権侵害についても同様の判断が下れば、ブロッキングに限らず、海賊版サイト対策の議論が進展しそうだ。
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