GPSを活用して高齢者を見守る「IoT杖」が、「国際福祉機器展」(10月10日〜12日、東京ビッグサイト)で展示されている。ハイパーネットワーク社会研究所、九州工業大学、オートバックスセブン、富士通九州システムズが共同開発した。2019年内の実用化を目指す。
市販の杖に、6軸センサー、通信モジュールを内蔵したGPS対応の専用デバイスを装着した。オートバックスセブンのクラウドサービスと連携し、外出時の位置や移動情報をWebアプリケーションで確認できる。自宅など登録した地点から離れたときや、転倒などのトラブルが起きたときに、家族や介護者にメールで通知することも可能。デバイスに搭載された緊急ボタンを押すと、コールセンターから緊急連絡先に連絡するサービスの連携も検討している。
違和感のない使い勝手を実現するため、デバイスの重量は30グラム台を目指す。デバイス開発やクラウドサービスの運用などを手掛けるオートバックスセブンICT商品部の古宮明さんは、「腕時計型デバイスなどと異なり、杖にデバイスを装着することで利用者の負担を軽減できる。将来は、靴を履くだけで見守れるのが理想だが、バッテリー消費や給電のことを考えると課題は残る」と説明する。デバイスの価格は1万円以下、サービスの月額利用料は500円前後をそれぞれ目指すとしている。
また、視覚障害者向けに、音声で目的地まで道案内する移動支援サービスも提案。利用にはスマートフォンとヘッドセットが必要。Googleのクラウドサービス「Google Cloud Platform」のAPIを活用した音声対話システムを使い、利用者が音声で目的地を設定すると音声で道案内してくれる。スマートフォンのカメラをかざしながら歩くと、クルマや人などの障害物をAI(人工知能)が検知し、ヘッドセットを通じて利用者に通知する。AIによる画像の自動検知機能は、九州工業大学が開発した。「緊急」と指示すると、IoT杖と同じように緊急連絡先に連絡できる。
オートバックスセブンは17年に、IoT機器を活用した高齢者見守りサービスの実証実験を開始。杖だけでなく、車載用機器を介した高齢ドライバーの見守りの実験もしていた。古宮さんは「車載機器で得たデータは、高齢者だけでなく一般向けにも活用できる。例えばドライバーの走行情報などを記録できれば信用度を数値化(スコアリング)でき、日本でライドシェアが普及したときにドライバーを選ぶ際の参考にもなる」と、今後の展望を語った。
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