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機械が作った音楽は人の心を動かすか 「AIで自動作曲」研究するワケこれからのAIの話をしよう(音楽編)(2/4 ページ)

人工知能は作曲家になれるのか? 自動作曲システム「Orpheus」の開発者に、自動作曲が浸透した時代の音楽文化はどうなっていくのかを聞いた。

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 深山さんは「Orpheusを使っていろんな人が作曲をしてくれましたが、ちょっと奇抜な歌詞やフレーズが多くて(笑)。でも、それに対してちゃんとメロディーが作られて、自動作曲として評価もされている。それがびっくりなんです」と振り返ります。

 利用者の無理難題にも従順に対応するOrpheus、泣けますね。人間だったらさじを投げたくなるような要望にも解を出して、自動的に返してくれる。それは自動作曲ならではの面白さかもしれません。

 ただ、作られたメロディーを自分で歌うことを考えた場合は、「こんなメロディータッチ、よう歌わんわ!」という曲も含まれています。見方を変えると、人間の作曲者は、アーティストが歌いやすいようにメロディーの作り方を制限されていた可能性もあります。深山さんも「作曲家が作る歌は、アーティストが歌いやすい、聴衆が聴いていて楽しいなど、そういう方向に目を向けているでしょう」と話しています。

作曲
曲調などを選べるのがOrpheusの特徴。画像はver 2(画像提供:深山さん)

 しかし、それは音楽の可能性を狭めていることにならないでしょうか。歌いやすさと楽しさの両立は必ず必要なのでしょうか。歌いにくいから楽しめない、聴いていても楽しくない、と感じてしまうのでしょうか。深山さんは「そうは思いませんね」と否定します。

 「結果的に、僕たちが知っている音楽は限定されていて、もしかしたら、まだまだ知らない音楽があるかもしれません。Orpheusが作った"歌いにくい歌"を頑張って歌えるように練習している人を見つけたりすると、自動作曲研究者の冥利に尽きますね。意図してなかったとしても、新しい音を作れたということになりますから」

 ただし、今のOrpheusは人間に使ってもらうことを想定しているため、人間が聴いて違和感がないか、人間が歌いやすいか、などを少し意識した作りにしているそうです。例えば「歌詞のイントネーションに従うというルール」を設けた点。

 「箸、端、橋……それぞれ東京と大阪でもイントネーションが違いますよね。歌詞を入力して生成する仕組みなので、音として聴いたときに歌詞の意味が伝わらないといけないなとは思ってます」

 そうしたルールを細かく積み重ねることで、歌らしさ、音楽らしさが生まれるのでしょう。しかし、深山さんは「ルールを入れていくだけでは、ある程度で限界が訪れます」と指摘します。

 「Song2Guitarという、私の一押しの研究が良い例かもしれません。音響信号を入力すると、ギター編曲を自動生成するものです。具体的にはギターの運指情報を生成して出力しています。つまり、運指が決まれば弾けるという発想に立ち、人間が弾けないものは作らないという制約を入れることで問題を解いています。私としては非常に気に入っているアプローチで、単純にデータを学習して生成しているだけでなく、人間が弾けるかどうかで生成物の特徴を決める、という発想です

音楽
「Song2Guitar」の研究

自動作曲で私たちの生活はどう変わる?

 さて、こうした多様な自動作曲サービスが生まれる中で、音楽の自動作曲がさらに浸透し、誰もが当たり前のように自動生成された曲を利用するようになる時代は来るでしょうか。そうなると、私たちの生活がどのように変わるのでしょうか。

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