「ビル風」を資源に変える都市型風力タービン、JDA国際最優秀賞を受賞
英国ランカスター大学の研究グループが開発した都市型風力タービン「O-WIND TURBINE」が、「JAMES DYSON AWARD2018」の国際最優秀賞を受賞した。強くて厄介な「ビル風」を資源に変えるアイデアだ。
ジェームズダイソン財団は11月16日、国際エンジニアリングアワード「JAMES DYSON AWARD2018」(JDA)の大賞にあたる国際最優秀賞を発表した。受賞作品は、ランカスター大学(英国)の研究グループが開発した都市型風力タービン「O-WIND TURBINE」。強くて厄介な「ビル風」を資源に変えるアイデアだ。
高層ビルの多い都市部では、建物の影響で「剥離流」(建物の壁面に沿って流れた風が建物を過ぎた際、周囲の風より早い速度で流れる現象)や「吹き下ろし」「逆流」などさまざまな方向から強い風が吹く。しかし従来の風力発電タービンは一方向の風しか捉えられず、ビル風のような予測不能な風は風力発電に向かないとされてきた。
O-WIND TURBINEは、幾何学的な形状のベントを複数設けた直径25センチほどの球体。さまざまな方向から吹き付ける風をいずれかのベントで受け止めて回転する仕組みで、ビルの側面など巨大な構造物、バルコニーなど風速が最大となる場所に設置することを想定している。
効率の良い形状をデザインするにあたり、2人は在籍するランカスター大学に助力を求めた。同大学エナジーランカスター部門ディレクターを努めるハリー・ホスターさんは、「最初に2人の学生から新しい風力タービンのためにテスト施設を使いたいという問い合わせがあったとき、私たちはそれを単純でありふれたタービンのバリエーションくらいに考えていました」という。
「しかし、2人がビデオや試作品を見せてくれたとき、その先入観が吹き飛びました。どんな風でも補足する、その能力によって都市の発電が新たなレベルに引き上げられることを直感しました」(ホスターさん)
JDAの最終審査員を務めるジェームズ・ダイソン氏(Dyson創業者)は「再生可能エネルギーを作り出すという非常に大きな課題に取り組み、幾何学的形状を採用してこれまで見過ごされてきた都市のエネルギー活用に臨んでいます。これは独創的なコンセプト」とコメントしている。
開発者の1人、ニコラス・オレリャーナさんは、「私達が臨んでいるのは、O-WIND TURBINEによってタービンの有用性が向上し、世界中の人々が手頃な価格でタービスを手に入れられるようになることです。都市は風の強い場所であるにもかかわらず、現在のところ、この資源を有効に活用できていません。環境に優しいエネルギーを容易に生み出せるようになれば、私たち一人ひとりが地球を保護する上でより大きな役割を果たすようになるはずです」と話す。
オレリャーナさんによると、既にO-WIND TURBINEの実用化に向け、投資家との交渉に入っているという。「今後数カ月で契約を確保したいと思っています」(オレリャーナさん)
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