「世の中が変わることが面白い」 84歳の田原総一朗氏がAIに興味を持つ理由:これからのAIの話をしよう(メディア編)(5/5 ページ)
ジャーナリストの田原総一朗さんは、なぜ人工知能の取材を熱心に続けているのか。AIに関心を持ったきっかけや、取材を通して感じたAIへの思いを聞いた。
―― いろんな業界が、これからカオスと化していくんですね。
何言ってるの、全然カオスじゃないよ。変わろうとして、彼らは生き生きしている。あなたは変化に否定的だからカオスなんて発言が出る。
いろんなところで変化が起き始めている。政治もそうだ。アメリカではトランプが出てきたが、今までの大統領とは全く違う。どこが違うと思う?
―― 全く政治経験がないまま大統領になった人、でしょうか。
そうじゃない! こういうことをしっかり考えないと人工知能に負けてしまう。世の中でいろいろな変化が起きていて、どんどん刹那的になっている。イギリスのEU離脱の動きだってそうだ。民主主義を守ろう、EUを守ろうと考えたドイツのメルケル元首相だって失脚してしまった。
人工知能を学んでいるなら、そうした話題に好奇心を持たなきゃいけない。そういう問題に対する好奇心を持ち、どうやって人工知能で解決するかを考えると人工知能の幅も広がる。どんどん挑戦していかないと。
取材を終えて
好奇心が服を着て歩いているような人。それが田原総一朗さんなのだと思います。
インタビューを終えて、私の著書の1つである「誤解だらけの人工知能」をお渡しすると、あいさつもそこそこにすぐ読みふけっておられました。学び続けようとする情熱の深さに、私自身が同じ84歳になったときに同じことをできるだろうかと胸に手を当てました。
人工知能はあくまで手段。その手段を用いて何をするのか。それを考えるためには視野狭窄であってはならないというおしかりを受け、反省するしかありません。1人のエンジニアとして背筋が伸びたインタビューでした。
著者プロフィール:松本健太郎
株式会社デコム R&D部門マネージャー。 セイバーメトリクスなどのスポーツ分析は評判が高く、NHKに出演した経験もある。他にも政治、経済、文化などさまざまなデータをデジタル化し、分析・予測することを得意とする。 本業はインサイトを発見するためのデータアナリティクス手法を開発すること。
著者連絡先はこちら→kentaro.matsumoto@decom.org
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