AIが視覚障害者の“目”に 画像認識デバイス「OrCam My Eye」で普通のメガネが進化:“日本が知らない”海外のIT(2/2 ページ)
視覚障害者をサポートする画像認識AI技術を活用したデバイス「OrCam My Eye」。イスラエルのスタートアップが世界で展開している。
色の識別も可能だ。例えばブラウスを手に持って指をさすと、色を音声で知らせてくれる。米国版は紙幣を識別する機能も搭載する。米国紙幣を視界に入れると「5dollars」(5ドル)と読み上げるのだ。
家族や友人、同僚など、いつも会う人を登録できる識別機能も搭載した。事前にOrCam My eyeで対象者の写真を撮り、名前と共に保存しておくと、対象者が視界に入ったときにその人物の名前を音声で教えてくれる。100人まで登録可能。
画像認識から音声発話まで全てデバイス内で処理されるため、スマートフォンやWi-Fiと接続する必要もなく手軽である(ソフトウェアアップデートのためにWi-Fiは搭載)。
OrCam My eye 2.0の参考価格は4500ドル(約60万円)。人間識別機能がない、読書のためだけのデバイス「My reader 2.0」は3500ドル。
2050年、世界の人口の半分は「近視」に
欧州では、過去50年で近視の人の数は過去最多となっている。この潮流は欧州だけにとどまらず、オーストラリア・シドニーの非政府組織Brien Holden Vision Institute(BHVI)は、「50年には世界人口の半分である約50億人が近視になっているだろう」と予測している。
日本も例外ではない。日本国内の人口の約3分の1である4000万人が近視といわれている。17年12月に発表された文部科学省の学校保健統計調査によると、小中学生の裸眼視力で「1.0未満」の割合が過去最高になっているという。視力が1.0未満の小学生は32.46%、中学生は56.33%と過去最高の数値で、高校生も62.30%と非常に高い数値だ。
文部科学省はこの調査結果について「長時間にわたり、スマートフォンやゲーム機を近くで見続けた生活習慣による影響」と述べている。
OrCam My eye 2.0は日本語対応が済み、日本の営業所も始動、今年9月末から日本語と英語に対応した日本仕様版が発売された。今後高齢化で多くの人々の視力が低下することも考えられるため、デバイスに対する需要は拡大していくだろう。今後の展開に注目したい。
文:中森有紀 スペイン・バルセロナ在住。大学でスペイン現代史を専攻、在学中に1年間スペインに留学。大学卒業後、書店勤務と英語講師を経験した後バルセロナに移住。英語、スペイン語、カタルーニャ語、日本語の4カ国語を話す通訳&ライター。2児の母。趣味はサッカー観戦と肉まん作り。
編集:岡徳之(Livit)
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