「鉄人28号」が抱える脆弱性とは? ロボット悪用を防ぐ”認証”を考える:架空世界で「認証」を知る(3/3 ページ)
小説、漫画、アニメ、映画などの架空世界に登場する「認証的なモノ」を取り上げて解説する連載をITmediaで出張掲載。第7回のテーマは「鉄人28号」の認証について。
主に音声入力をインタフェースとするのであるから、まず声紋認証はあって良いだろう。ただし、前回の「ミッション:インポッシブル」のときにも紹介したが、声紋認証は完璧ではなく、起動時の本人認証に用いるには心もとない。
では、起動時にはどのような認証を用いるのが効果的だろうか?
鉄人は兵器であり、「急な敵襲に出動する」という状況が予想される。そのため、できるだけ早急に認証が完了する方法が望ましい。現代と同レベルの技術があれば、顔認証や指紋認証は十分な速度で認証が可能だ。虹彩認証も最近ではだいぶ速くなっている。
しかし、生体認証が発達していない時代と考えると、ICカードのような鍵となるものを使用する所有物認証が良いだろう。さらに、所有物認証だけだとその鍵も操縦器と一緒に盗まれてしまう危険性があるため、4桁の暗証番号のような簡単な知識認証と組み合わせで「多要素認証」としておきたい。当然、暗証番号は何回か間違うとロックされるようにしておく。
「いいも悪いもリモコン次第」という話のギミックを壊してしまうのは忍びないが、安心・安全を目指すなら、ぜひ一考いただきたい。
ライバルロボ・ブラックオックスはどうなのか?
一方、「鉄人28号」に度々登場するライバルロボ「ブラックオックス」はどうなっているのか。
「鉄人より強く、モノを考えるロボット」として不乱拳(ふらんけん)博士が開発したロボットだが、これは完全自律式のAIにより動いている。一応腕時計型の小型操縦器で簡単な指示を与えることが可能だが、自律思考が基本なのは変わらない。
認証に関しては鉄人とさほど変わらないようなのだが、自律思考することで他の操縦者の異常な操作を受け付けないところが強みだ。
鉄人よりもパワーは上であり、度々鉄人を苦しめることになる。「鉄人も自律思考型の方がよかったのでは……?」と思うが、毎回操縦者の機転によりブラックオックスは敗れている。やはり、人間の機転と鉄人のパワーの総合力の方が勝るようだ。
ただ、現代では学習型AIが発達してきていることはニュースなどでご存じのことだと思う。いつか人間を超える日が来るかもしれない。また、限られた状況であれば、操縦者が近くにいなくても良いという運用上の利点からも、ブラックオックスのような自律思考ロボットの方が優れている場合もあるだろう。
世界を守るロボットにはぜひ認証を!
今回は「鉄人28号」の認証について紹介してきた。結局、操縦器による「所有物認証」のみで、操縦器自体を奪われてしまうことへの対策はほとんど取られていないという残念な結果となった。こうしたことのないよう、今後の鉄人(?)にはぜひ認証を取り入れてほしいと願っている。それがお話として面白いかどうかはともかく……。
ところで、他のロボットモノでは操縦者の認証はどうなっているのだろうか……?
エヴァンゲリオンやパトレイバーは以前に紹介しているが、特にリアルロボットものについては気になるところだ。
というわけで次回はロボットアニメ制作において最有力と言っても良い制作会社「サンライズ」の作品を題材に、認証について解説していきたいと思う。お楽しみに。
それでは本日はここまで!
著者プロフィール
朽木 海 (ライター、編集者、γ-Reverse代表)
ゲーム会社や出版社などの「IPが欲しい会社」と、ライトノベル作家や脚本家、漫画家などの「IPを作りたいフリーランス」を繋げるためのプロジェクト「γ-Reverse」の代表。引き続きライター業や編集者業も行っています。
「せぐなべ」紹介
ITを活用する上で無視できない認証とセキュリティの話題を、楽しく分かりやすく伝える認証セキュリティの情報サイト「せぐなべ」。運営企業のパスロジは、企業向け認証プラットフォーム「PassLogic」や個人向けパスワード管理アプリ「PassClip」などを提供。ITmedia NEWSで認証関連の話題を分かりやすく解説する「今さら聞けない「認証」のハナシ」を連載中。
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