いよいよ施行された「改正著作権法」は、弁護士や学者にとってビジネスチャンスとなるかもしれない:「STORIA法律事務所」ブログ(3/3 ページ)
2019年1月1日から施行された改正著作権法には、学識経験者にとって新たなビジネスチャンスの可能性があるといいます。AIと著作権に詳しい弁護士の杉浦健二さんが解説します。
【新法47条の5における政省令が定める基準(概要)】
(1) サービスに使用するデータベースに係る情報漏えいの防止のための措置を講ずること
(2)サービスが改正法の要件に適合するものとなるよう、あらかじめ、当該要件の解釈を記載した書類の閲覧、学識経験者に対する相談その他の必要な取組を行うこと
(3)サービスに関する問合せを受けるための連絡先その他の情報を明示すること
(4)IDやパスワードにより受信が制限された情報や、業界慣行に沿って情報収集禁止措置がとられた情報(robot.txtやメタタグ等による検索回避措置)を使用しないこと(※インターネット情報検索サービスのみ)
(1)は施行令第7条の4第1項第2号、第2項
(2)は施行令第7条の4第1項第3号、施行規則第4条の5第1号
(3)は施行令第7条の4第1項第3号、施行規則第4条の5第2号
(4)は施行令第7条の4第1項第1号イロ、施行規則第4条の4
※旧施行令第7条の5にあったプログラムによる自動収集の要件はなくなった
ここで注目すべきは、改正法は上記(2)サービスが改正法の要件に適合するものとなるよう「あらかじめ当該要件の解釈を記載した書類の閲覧、学識経験者に対する相談その他の必要な取組を行うこと」を求めている点です(著作権法47条の5第1項、施行令7条の4第1項第3号、施行規則4条の5第1号)。
具体的にどのような取り組みが「学識経験者に対する相談その他の必要な取組」にあたるのかは今後の刊行物等で明らかになっていくものと考えられますが、弁護士(※)や学者に対して相談や照会を行ったうえで、自社の提供する所在検索サービスや情報解析サービスが改正法が求める要件を満たしていることを裏付ける意見書等を準備しておくことが一例として考えられます。
(2019年1月7日 追記)「学識経験者」に弁護士が含まれることは、文化庁著作権課に確認しました。
なお新47条の5における政省令で定める基準の要件については、文化庁も「平成30年著作権法改正に伴う政省令改正の概要」において、以下の通り説明しています。
改正著作権法は所在検索サービスや情報解析サービスにとって追い風となる
改正著作権法47条の5は、あふれる情報を分かりやすく整理して提供してくれる所在検索サービスにおける著作物の軽微利用や、これまでは引用要件(32条1項)を満たすこと等でしか回避できなかったAI等による情報解析結果の提供時における著作物の軽微利用をそれぞれ実現してくれるものであり、これらのサービスを営む事業者にとって間違いなく追い風となるものです。
ただし自社のサービスが新47条の5その他の要件を適正に満たしている必要がある点には注意が必要であり、その要件の1つとして「学識経験者への相談」が明記されたことは留意しておくべきでしょう。
逆に弁護士や学者など「学識経験者」に該当し得る方々は、今回の改正によって相談や照会を受ける機会が増える可能性が生じたのであり、その意味で新たなビジネスチャンスが到来したといえるのかもしれません。
改正著作権法で新たに許されることとなった著作物の利用範囲を理解し、改正著作権法を最大限に活用することで、適法かつ便利な所在検索サービスや情報解析サービスが世の中に増えていくことが本当に楽しみです。われわれはこのようなサービスをサポートするための努力を本年も惜しまない所存です。
著者プロフィール
弁護士・杉浦健二
ソフトウェアやシステム開発などのITビジネスにおいて必須となる契約書作成からトラブル解決までを企業の社外法務部としてサポートしています。STORIA法律事務所共同代表。ブログ更新中。
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