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「スクショもNG」で広がる混乱、合法と違法の線引きは? “違法ダウンロード対象拡大”の問題点(3/4 ページ)

著作権法の改正案で検討されている「違法ダウンロード対象拡大」は何が問題なのか。合法と違法の条件をあらためて整理してみたい。

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何が合法で何が違法?

 では、どういった条件でダウンロード行為の合法・違法と判断すればいいのだろうか。

 院内集会で法学者の大屋雄裕さん(慶應義塾大学教授)が解説した内容を交えながら整理したい。まず前提として「自動公衆送信の受信(ダウンロード)」「デジタル方式の複製」「違法と知りながら」という要件に当てはまると違法となる。詳しく見ていこう。

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自動公衆送信の受信(ダウンロード)

 ここでいう自動公衆送信は、不特定多数を対象にネット上のサーバに著作物を置き、利用者が閲覧・ダウンロードすることで著作物を送信できるような状態にしておくことだ。つまり、海賊版サイトにアップロードされたzipファイルを違法と知りながらダウンロードする行為などは違法になる。

 裏を返せば、個別に送るメールやメッセンジャーの添付ファイルは含まれない。大屋教授は「ロッカー型のクラウドサービスのように、特定の利用者のみダウンロードできるサービスも対象外になり得る」と指摘する。

デジタル方式の複製

 デジタル方式の複製(コピー)が対象になるので、アナログ方式の複製(紙への印刷)や、Webブラウザでの視聴・閲覧、キャッシュは対象外。つまり、ファイルをダウンロードさせない漫画村のようなストリーミング方式のサイトやリーチサイト、YouTubeでの閲覧などは含まれない。

 海賊版サイト対策として検討されているはずの議論だが、実際はそうしたサイトへの効果は見いだせない可能性があるのだ。

 被害者であるはずの漫画家たちからも「行き過ぎ」という異論が出て、想定していた海賊版サイトも取り締まれない――こうした背景もあり、誰が、何のために出した法案なのかと疑問視する声は少なくない。

事実を知りながら

 2月8日の院内集会でも問題視されたのが、違法でアップロードされたという「事実を知りながら」という条件の解釈について。「事実を知っていたかどうか」は誰がどう判断することなのか。院内集会では、日本マンガ学会理事の藤本由香里さん(明治大学教授)が「著作権法に詳しい表現のプロほどこの要件に引っ掛かるのでは。自白の強要につながる可能性もある」と指摘。

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 違法にアップロードされたファイルをダウンロードしたという客観的な事実は検証できるが、「違法なものと知りませんでした」と言われればそれまでになってしまう。そもそも、広告収入を目的に運営されている海賊版サイト自らが「違法なファイルです」とうたうことは考えにくい。

 また藤本教授は「被害を与えている真っ黒なモノ(海賊版サイトなど)を取り締まるのではなく、グレーなものを違法化し、真っ白なもの以外全てNGといっているように感じる。本来合法でないものは萎縮すべき範囲であるといわれているようで、国民生活への過度な干渉と感じる」と難色を示していた。

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