あなたは人工知能が何なのか、人に説明できるだろうか?:新連載・よくわかる人工知能の基礎知識(3/3 ページ)
いまや毎日のようにAIの話題が飛び交っている。しかし、「この製品やサービスではAIを使っている」というのは具体的に何を指すのか、どれほどの人が説明できるだろう。初心者向けに人工知能とは何かに迫る新連載がスタート。第1回は「AIとは何か」。
強いAIと弱いAI
とはいえ現時点で「この製品・サービスにはAIが使われている」と言うときは、「何らかのデータに基づいて、機械が人間の知性や論理的思考に近い判断を行い、求められた結果を出す仕組み」を指すことが多い。それを実現する技術の一種が、機械学習やディープラーニングと呼ばれるものだ。本連載ではそのうちのいくつかを取り上げ次回以降に解説していく。
ただ個々の技術の解説に入る前に、もう一つだけAIの定義に関係する話をしておこう。それは「強いAIと弱いAI」と呼ばれる議論だ。
これは人工知能批判を行っていることで知られる米哲学者ジョン・サール氏がつくった言葉。「強いAI」は人間のような精神や自我、意識を持つ、文字通りの「人がつくり上げた知能」であるとされる。そのレベルにまで至っていないのが「弱いAI」だ。
また現在では、ある目的に特化した高度な判断はできるものの、他の作業はできないようなAIを「弱いAI」と呼び、汎用型で何でもできる夢のような人工知能を「強いAI」と呼んで区別することもある。
この場合、自動運転車に搭載されたAIは自動車の運転は得意だが、将棋で人間に勝つことは難しいだろうから、「弱いAI」ということになる。
「人工知能」と言うからには、強いAIこそ本来の「AI」であると定義して、それを目指すのが本来の姿だといえるかもしれない。しかし当然ながら強いAIを実現するのは難しく、まだその実例はないとされている。今後強いAIが実現されるかについては、別の回で考えてみたい。
一方で弱いAIは、前述の自動運転車のように一定の成果をあげている。中にはチェスや将棋、クイズ大会で人間の王者を打ち負かすAIのように、限られた用途ながら人間を上回るパフォーマンスを発揮する例もある。弱いAIは強いAIに比べてできることが限られているし無視しても構わない、と考えるのは合理的だろうか?
その答えは、皆さんがAIに何を求めるか次第だろう。本連載では、主にビジネスパーソンを対象に、ビジネス面でのAI活用を中心に考えていきたい。弱いAIの例も積極的に取り上げる。
もし10年後に本連載を読み返していただけるようなことがあれば、きっと極めて陳腐で時代遅れなAIの捉え方をしていると感じられることだろう。逆にそのように感じられるほど、今後も急速にAI技術が進化していくことを願いたい。そうした進化に後れを取らないよう、本連載を土台として、常に情報をアップデートしていっていただきたい。
著者プロフィール:小林啓倫(こばやし あきひと)
経営コンサルタント。1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院地域研究研究科修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米Babson CollegeにてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える! 金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』(朝日新聞出版)、『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『テトリス・エフェクト 世界を惑わせたゲーム』(ダン・アッカーマン著、白揚社)、『シンギュラリティ大学が教える 飛躍する方法』(サリム・イスマイル著、日経BP社)など多数。
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