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「神様が来て全てを壊した」 繰り返される仕様変更、本当にあったAIプロジェクトの怖い話(1/3 ページ)

AI(人工知能)ベンチャーのトライエッティングが“大炎上プロジェクト”の経験を振り返る。本当にあった「メテオフォール型開発」の怖い話。

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AI(人工知能)ベンチャーのトライエッティング(愛知県名古屋市)の長江祐樹社長

 「人事系のAIシステムを8カ月で作ってほしい」――この依頼から、全てが始まった。

 AI(人工知能)ベンチャーのトライエッティング(愛知県名古屋市)の長江祐樹社長は、同社が体験した“大炎上プロジェクト”の経験を振り返る。

 同社は企業のAI活用を支援するAI専任のSIerだ。ヒアリングから設計、業者選定、施行管理や納品までを一括で担当。実際のシステム構築はベンダーに委託し、上流設計やアルゴリズム構築などを担う。

 2016年創業の若い会社だが、早くも炎上プロジェクトの洗礼を受け、そこから大きな学びを得たという。19年3月現在も進行中のプロジェクトの話だが、学びを生かして状況は改善。いまは順調にプロジェクトを進めている。

 長江社長は、18年にネットで話題になった「メテオフォール型開発」そのものだったと当時を振り返る。メテオフォール型開発とは、顧客の要望でこれまでの要件定義や基本設計などの仕様がひっくり返り、プロジェクトがうまく進まない様子を表現したもの。神様が気まぐれで全てを滅ぼすメテオを発動するという意味だ。笑い話のような内容だが、実際に体験した人たちは全く笑えないだろう。

 神様降臨(2人)とメテオ発動、その後の対応までを、3月5日に開催されたAIイベント「SIX 2019」で語った。

「IRに書いちゃったから、2カ月前倒しでよろしく」

 問題のプロジェクトは、「人事系のAIシステムを8カ月で開発する」というもの。現場部門の担当者が人事担当にシステム開発の要望を出し、情報システム部が要件を取りまとめてトライエッティングにPoC(概念実証)を依頼した。トライエッティングはシステムの上流工程の設計とアルゴリズム構築を担当し、システムのユーザーインタフェース構築はシステムベンダーに再委託した。

 現場担当や人事担当もモチベーションが高く、開発から3カ月ごろまでは順調に見えた。しかし、ある日突然「裏の決裁者」という人事担当の上司が登場。「役員が期待してIRにプロジェクトの内容を記載してしまった」と告げられた。クライアントにはPoCの結果が良かった旨を報告していたが、予想していなかった事態になった。

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「裏の決裁者」が登場

 人事担当の上司は「スケジュールを2カ月前倒ししてほしい」と続けた。社名付きでIRに書かれてしまったためトライエッティングは断ることもできない。同じく“寝耳に水”状態の情シス担当と協力し、何とか間に合うようにプロジェクトの仕様やスケジュールを変更した。プロジェクト開始から3〜4カ月目の出来事で、あと2カ月しか時間がない。

 その後、スケジュール通りに何とかリリースにこぎつけたが、ここで1人目の神様が登場する。

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