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もう「日本スルー」はなくなる? 技適なし最新端末が日本で使えるように(前編)(2/3 ページ)

技適が緩和される? どのように? ITジャーナリストの山崎潤一郎氏が総務省の技適担当者に詳細を聞いた。その前編をお届けする。

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インターネット利用の簡便な届け出システムを構築

 特例制度の内容を具体的に見ていこう。ただし、現時点で電波法の改正案に明記されているのは、基本的な枠組みのみ。具体的な内容は、法案成立後に総務省令を整備することになるという。

届け出端末の要件

 技適に相当する技術基準を満たす端末であれば、届け出ることができる。具体的には、IEEEやITUで定められた国際的な技術基準を念頭に置いている。Wi-FiであればIEEE802.11、BluetoothであればIEEE802.15.1、ZigBeeの場合はIEEE802.15.4といったところだ。また、携帯電話の場合は、ITU(国際電気通信連合)の規格である「3G」「4G」といった通信方式を指す。基本的に市場に流通するメーカー製端末であれば、これらの規格は満たしているはずなので問題はないであろう。

運用期間

 最大で180日までの運用が可能だ。6カ月あれば、大方の実験や試験は可能であろうという考え方だ。ただし、総務省総合通信基盤局電波部電波政策課課長補佐の山内匠氏は「同じ端末を利用する場合でも、実験の目的が異なれば、新たな届け出として受け付ける」と明かす。また、その逆に、同じような実験目的で異なる端末を使用する場合は、端末の違いを明確にした目的にすることで、新たな届け出として処理されることになるそうだ。ちなみに、有効期間を超えた後は、同じ目的・同じ規格による届け出に関しては「2回目は受け付けない」(山内氏)という。

 運用期間について、在日米商工会議所(ACCJ)が改正案に対し興味深いパブリックコメントを寄せている。それによると「これまでの経験上12カ月程度は試験研究に時間を要する」とし6カ月では不十分という考え方を示している。

 これに対し総務省では「電波法の基本的な考え方として、混信の防止など電波環境に悪影響が及ぶような状況にも配慮しなければならない。その一方で、特例制度の理念であるイノベーションの促進にも目配せする必要がある。180日は、双方のバランスを取った結果」(片桐氏)だと理解を求める。

 技適の特例という部分では前例がある。訪日外国人が自ら持ち込む端末に限りFCCなどの認証を得た機種であれば、入国から90日間は、技適未取得端末を利用可能とする法改正が2016年に実施されている。

端末の台数

 今回の特例では、届出時の端末台数に特段の制限は設けていない。ただ、さすがに数万台などという大規模な試験ともなると、電波環境への影響が懸念される。そのような事例については「立ち入り検査を実施するような判断がなされる可能性もある」(片桐氏)と釘を刺す。

 前出のACCJは「端末の台数」についても興味深いコメントを寄せている。要約するとこうだ。「スマートスピーカーのような製品は、数千名におよぶユーザーが機械学習の性能検証に関わることで商品化される。米国では、試験評価などの目的であれば、4000台を上限に試験製品の輸入が可能」とある。今回の特例制度は、台数制限を設けていないので、多数の端末を利用した機械学習の検証にも対応可能ということになる。

届け出について

 個人あるいは法人は、次の項目を届け出ることでこの制度を利用できる。「氏名・住所等の連絡先」「実験等の目的」「無線設備の規格」「設置場所」「運用開始の予定日」「相当基準適合の確認方法」等。ただ、前述のように法案成立後に、総務省令で詳細な部分を決めていくそうなので、これらの項目以外にも、無線機の機種名やモデル番号といった、他の情報の届け出も必要になるだろう。

 届け出の手段としては「インターネットで届け出ができるよう検討中」(片桐氏)だという。本人確認方法など、詳細はこれから詰めていくそうだ。筆者は、つい先ごろアマチュア無線局の開局申請をネット経由で行ったのだが、このときは、専門的、技術的な項目を埋めるのに苦労した。そのため、今回の特例制度の届け出においても同様のハードルがあるのではと懸念を抱いてしまった。だが「イノベーションの促進という大前提があるので、多くの利用者に使ってもらえるようにできるだけ簡便なシステムにしたい」(山内氏)と意気込む。

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 総務省が運用する「電波利用電子申請・届出システム Lite」。筆者は、ここのアマチュア無線局の開局申請で苦労した。特例制度の届出システムは、より簡便なものを望む

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