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ノートルダム大聖堂火災と9.11と陰謀論動画の世紀(2/3 ページ)

パリのノートルダム大聖堂で起きた火災は、YouTubeで大きな騒動となった。9.11と結びつけた陰謀論である。

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YouTubeと陰謀論

 もういちど公式の説明を見てみましょう。情報パネルの対象となるトピックは、「月面着陸のように捏造が疑われることも少なくありません」と書かれています。この機能は2018年7月に公開されたのですが、それを伝える公式ブログの記事には、実際に月面着陸関連の動画および検索結果でどのように情報パネルが表示されるか紹介されています:

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 ご存知の方も多いと思いますが、アポロ計画による人類の月面着陸が陰謀であった(実際には月になど到達していなかった)という主張が、時には冗談として、また時には大真面目に論じられています。Wikipedia上にも、「アポロ計画陰謀論」として長い記事がまとめられているほどです。こうしたいわゆる「陰謀論」は、大きな事件や事故、人々の注目を集めるイベントをめぐって数多く存在し、YouTubeに限らずあらゆるメディアで関連コンテンツが流布されています。

 その多くが馬鹿馬鹿しいもので、無視していてもそれほど害はありません。しかし陰謀論に絡めて、特定の人種や人物を差別・攻撃するヘイトスピーチや、社会の分断を招くようなデマの拡散が行われたとしたらどうでしょうか。残念ながらそのようなコンテンツが、実際にさまざまなソーシャルメディア上で数多く見られ、世論は各社に対応を求めています。

 特にYouTubeに対する批判は大きく、彼らはこうした声に押される形で陰謀論や人々の誤解を招くようなコンテンツへの対策を進めており、今回問題となった「情報パネル」もその一環でした。ちなみに今年1月には、こうしたコンテンツがたとえコミュニティ・ガイドラインに反していなくても、レコメンデーション機能の対象から外す(つまり表示されにくくする)対応を取ることを、公式ブログ上で発表しています

 とはいえYouTube上で視聴される動画数は、1日あたり数十億本に達していると、YouTubeトレンド・カルチャー統括部長のケヴィン・アロッカさんが著書『YouTubeの時代』の中で解説しています。また人々の大きな注目を集める話題ともなれば、関連動画が投稿される数も一気に跳ね上がり、例えば2013年に突如発生したネットミーム「ハーレム・シェイク」(「ハーレム・シェイク」という楽曲に合わせて踊るというもので、日本でも時折発生している「踊ってみた」動画の流行に近い)の場合、1日に1万本もの動画が作成・投稿されたそうです。こうした突発的に発生する、膨大な量のコンテンツに対応するためには、アルゴリズムの力を頼るしか方法はありません。

 したがって今回、情報パネルという機能をアルゴリズムで実現したこと、そのアルゴリズムに不備があったことは責められるものではないでしょう。今回の一件を受けて、より精度の高いアルゴリズムが開発されていくはずです。

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