「特殊詐欺の電話」AIで見破る NTTグループが実証実験 犯人が使う表現を学習
NTTグループ4社が、クラウドとAIを用いて特殊詐欺被害を防ぐ実証実験を行うと発表。実験の開始時期は2019年度第2四半期(7〜9月)、実施エリアは東京都内を想定。使用するAIには、実際の詐欺事件の犯人が使った言い回しを学習させる予定。
NTT、NTT東西、NTTコミュニケーションズは5月9日、クラウドとAI(人工知能)を用いて特殊詐欺被害を防ぐ実証実験を行うと発表した。被験者の固定電話に通信機能を持つレコーダーを装着し、通話を録音。音声データをクラウド上に転送し、AIによる解析で“あやしさ”を判定する仕組みで、詐欺の疑いが強い場合は本人と親族への注意喚起を行う。
実験の開始時期は7〜9月。実施エリアや対象者は今後行政機関と調整するが、東京都内を想定している。特殊詐欺はオレオレ詐欺や架空請求などを指し、都内では18年に過去最悪となる計3913件が認知されている(警視庁調べ)。最新技術を活用し、手口の巧妙化が進む詐欺事件を防ぐ狙いだ。
実験では、事前登録した親族や友人などを除く全ての通話内容を録音し、分析対象とする。周知を図るため、通話開始時に「この通話は防犯のため録音させて頂きます。ご了承ください」との音声を流す。レコーダーはSIMカードを内蔵しており、通話終了後、音声データを自動でクラウド上に送信する。
音声データは、クラウド上でAIの音声認識技術によってテキスト化し、言語分析技術によって不審な表現の有無を精査する。教師データの量や詳細は非公開だが、警視庁の協力を得て実際の詐欺事件の犯人が使った言い回しを学習し、判定の精度を高める予定という。
詐欺だと判定した場合は、被験者と親族にメールを送信し、電話の内容を信じて金銭などを振り込まないよう注意喚起する。
実験では一連のプロセスを通じ、“特殊詐欺解析AI”の精度向上や実用性を検証していく。NTTの広報担当者は「録音が必須となるが、どれほどユーザーからの需要があるかを検証したい」と説明。実用化のめどは未定だが、「高齢者などが詐欺の標的になるケースを防ぎたい」(同)と話している。
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