月は地球の“マグマの海”からできたという新説
月は原始地球にあったマグマの海(マグマオーシャン)からできた――JAMSTECらの研究グループが新たな可能性を導き出した。
月は原始地球にあったマグマの海(マグマオーシャン)からできた――JAMSTEC(海洋研究開発機構)、神戸大学、理化学研究所の研究グループが、スーパーコンピュータ「京」を使ったシミュレーションで新たな可能性を導き出した。
地球と月の成り立ちについては、約46億年前に原始の地球に火星ほどの大きさの天体が衝突してできたとする仮説が広く知られている(=巨大衝突仮説)。衝突のエネルギーで蒸発した岩石が地球の周囲にばらまかれ、重力によって再び集まってできたのが月だという。
この仮説は、現在の地球と月に見られるさまざまな特徴を説明できるため広く信じられてきたが、近年になって矛盾が指摘されている。巨大衝突仮説に基づくコンピュータシミュレーションでは地球に“衝突した側の天体”が月の材料になるとみられていたが、アポロ計画で月から持ち帰った岩石に含まれる元素を同位体比測定したところ、地球のものとほぼ一致した。この矛盾は「同位体比問題」と呼ばれている。
研究グループは、原始の地球がマグマの海に覆われていた可能性に着目。液体の岩石は個体の岩石と性質が大きく異なるため、それを加味した巨大衝突のシミュレーションを理化学研究所のスーパーコンピュータ「京」で行い、「月の材料として、原始地球由来の物質の割合が大きくなることが示された」(研究チーム)。
研究成果は英国の科学誌「Nature Geoscience」に4月29日付で掲載された。また研究に用いた計算手法は津波の遡上計算など幅広い応用が可能で、防災や工学の分野で発展が期待できるという。
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