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「満員電車で快適に過ごすための動き方」を物理シミュレーションで解き明かすデータサイエンスな日常(2/4 ページ)

満員電車での“理想的な振る舞い”を、仮想空間における物理シミュレーションを駆使して解き明かす

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 次に満員電車での人の動きを再現するため、混雑率が190%になるように人を配置する。想定するのは「1車両当たりの定員が135人程度で座席(54席)は満席、なおかつ立っている人が209人いる」という状態だ。

 ちなみに、車両サイズと定員は各電鉄会社が仕様を公開している。また混雑率は、国土交通省が主要路線における最混雑時間帯1時間の平均混雑率の調査結果を発表している。本記事のモデルは特定路線をそのまま再現したものではないが、上記データを参考にした。

 これらを前提に、独自にサラリーマンおよび電車を3Dモデリングし、さまざまな条件で人の動きをプログラミングのうえ、物理シミュレーションを行った。なお、満員電車の乗客はサラリーマンに限らないが、今回の分析では人の違いに重点を置いていないため、モデリングを簡易化するため満員電車に苦しむ象徴的なアイコンとして男性サラリーマンを採用した(すなわち筆者の分身である)。

満員電車
満員電車

シミュレーション結果:ポジションごとの最適な行動とは

 まずは、満員車両で乗客が特に能動的には動かない環境において、1人の乗客が降車する際の総衝突回数・降車時間をシミュレーションした。

 10回試行したときの平均は総衝突回数1044回、平均降車時間26.1秒となった。本シミュレーションにおける“衝突”は、連続した1回1回の接触を別のものとしてカウントしているため、あくまで相対的な目安としてほしい。

 降車に26.1秒かかるようでは、電車内の客がホームへ出る前に、駅で待っていた客が新たに乗車してくる可能性が高いだろう。結果、1駅当たりのスムーズな発着を妨げることになる。

 これが2人同時に降りる場合だと、どう変化するだろうか。

 同じく10回試行したときの平均は、総衝突回数1377回、平均降車時間19.3秒となった。

 総衝突回数は、人数が増えたことで増加したが、平均降車時間は短くなった。その理由は、降車が2人になったことでドアまでのルートに立っている乗客を空きスペースに寄せやすくなったことと、先に降りた客が通ったことでできた隙間で2人目の乗客がスムーズに降車できたからだ。

 さらに、3人同時に降りる場合の 10 回試行平均は、総衝突回数 1758 回、平均降車時間 18.5秒となった。

 なお、参考までに3人目以降の降車において、別のドアを利用する場合も想定したが、今回の車両サイズではお互いのドア付近の人の動きにそれぞれの人の流れの干渉は起きず、1人降車の場合と同じような結果となった。ちなみに、総衝突回数は2117回、平均降車時間は25.6秒だった。

 1人から2人、3人の降車になることで平均降車時間が下がったものの、総衝突回数が増加していることはトラブルの原因になりかねず、マナー的にも問題になる。そこで、この総衝突回数をできるだけ減らしつつ、かつスムーズな降車が完了するように、各乗客が能動的に動く状態を想定する。

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