検索
インタビュー

「海外は量子アニーリングに見切り」──ハードもソフトも開発する量子ベンチャー「MDR」に聞いた「量子コンピュータの今」(4/5 ページ)

世界有数の競争力を持つ日本の量子コンピュータのベンチャー企業MDRを立ち上げた湊雄一郎さんに「量子コンピュータの今」を聞く。

Share
Tweet
LINE
Hatena

他社のハードウェア開発を待っていても何も起きない

 横浜国立大学と共同で作製した超電導量子ビットは、量子ゲート方式での誤り訂正技術へのアプローチという意味が大きいという。


MDRと横浜国立大学山梨研究室が共同で開発した超電導磁束量子ビットの構造

 前述したように量子ビットはノイズに弱いため、誤り訂正は量子ゲートマシンが正しく計算する上で重要な技術だ。

 MDRには半導体系企業出身の技術者がいるため、これまで半導体で利用されてきた誤り訂正技術を超電導に応用できないかと湊さんは考えている。

 逆に、技術的な限界を自ら確かめるという目的もある。「ハードを自社で持っていないと、他社ハードウェアの開発待ちになってしまう。待っていても何も起きないので、自社で作ってみて判断した方が良い」(同)

日本企業、量子コンピュータに熱視線

 MDRが量子ゲート方式にシフトしたきっかけは、三菱UFJ銀行との議論だった。MUFGを含め、金融分野はセキュリティ(量子暗号など)や金融ポートフォリオ作成(組み合わせ最適化)などのために量子ゲート方式の計算を求めるという。

 また、「米国と比べても、日本の量子コンピューティングビジネスは進んでいると思う」と湊さんは米IBMの例で説明する。

 IBMとIBM製量子コンピュータのクライアント企業・大学とを結ぶ「IBM Q Network」には、慶應義塾大学、JSR、長瀬産業、三菱ケミカル、日立金属、本田技術研究所、三菱UFJ銀行、みずほフィナンシャルグループ、そしてMDRが名を連ねる。IBM Q Networkに参画する約60団体のうち、8つが日本企業と存在感を放っている。

 「D-Waveのクライアントも3分の2は日本企業だと聞く。このような状況を考えても、日本企業は量子コンピューティングにたくさんお金を出すのではないか」(同)

 MDR以外のベンチャーでも動きがある。ABEJAやグリッドなど、複数のAIベンチャーが量子コンピューティングに今年から参入してきている。「AI企業が差別化を図れる次のテーマというと、量子コンピュータ以外ないと思う」と湊さんは分析している。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る