「アクセス警告方式」は実効性に疑問 海賊版サイト対策の有識者検討会
総務省が漫画などの海賊版サイトへの対策を議論する有識者検討会の第2回を開催。検討事項の1つである「アクセス警告方式」について議論した。
総務省が6月3日に開催した「インターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会」第2回会合では、対策案の1つとして検討されている「アクセス警告方式」が焦点となった。一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)の野口尚志氏は、アクセス警告方式の技術的な課題を指摘した上で「実効性の面で疑問が残る」と語った。
アクセス警告方式は、事前に利用者に同意を得た上でISPなどが通信をチェックし、海賊版サイトにアクセスしようとした場合、Webブラウザに警告画面を表示させるというもの。しかし、アクセス警告方式には、HTTPS(SSLによる暗号化通信)への対応が技術的に難しいという問題がある。野口氏は「HTTPSは、ブラウザとWebサーバ間の通信を暗号化しているため、ネットワークの途中で手を加えることができない」と説明する。Webサイトはもちろん、各種ネットサービスでもHTTPSアクセスが一般的になりつつあるいま、アクセス警告方式の実効性に疑問を投げかけた形だ。
またアクセス警告方式では、ISPなどの拠点に置かれる収容ルータに専用機材を導入するなどして、海賊版サイトへの接続が要求されたときに「(1)利用者のアクセス先がどこであるのかを確認し、(2)警告サーバが正規のアクセス先の代わりに、(3)本来のコンテンツを警告画面に差し替える」という。これは「(1)盗聴(2)なりすまし(3)改ざんそのものだ」と野口氏。高価な専用機器を大量に導入する必要もあり、「導入コストを考えると、海賊版対策のために(アクセス警告方式を)導入するのは過剰投資としか言いようがない」という。
アクセス警告方式については、他にも「通信の秘密、検閲の禁止など憲法上の問題をクリアできていない」「海賊版コンテンツを閲覧またはダウンロードしたい利用者は回避可能なため、効果が限定的である」という指摘がパブリックコメントなどで相次いでいる。
この日の会合では、海賊版サイト運営者の取り締まりを強化し、利用者端末でフィルタリングサービスを利用するなどの対策を検討することについては意見が一致したものの、アクセス警告方式については技術的な課題を報告するにとどまった。
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