「その彼氏、将来性がないよ」「ほら、肩くらいもんでよ」──“セクハラ・パワハラVR”、戦慄の10分間を記者が体験(2/2 ページ)
セクハラ、パワハラを体験できるVRコンテンツをグリーが開発。法人向けに提供している。声を荒げる上司に詰め寄られる場面から始まる“戦慄の10分間”を体験してきた。
「グリーは研修会社ではない」
グリーのXR事業開発部は、昨年6月から法人向けのVR事業「XTELE」(クロステル)を提供している。「セクハラ・パワハラ体験VR」のような研修コンテンツは主力サービスの1つで、他にも店舗向けの接客・クレーム対応研修や、アパレル・調理などの技能研修に関するVRコンテンツも制作実績があるという。
コンテンツの開発では、外部の専門家とのパートナーシップを重視しているという。セクハラ・パワハラ体験VRは、弁護士事務所の増田パートナーズ法律事務所と共同制作したもの。専門知識を持つ弁護士がシナリオを執筆し、グリーの社員がコメントや監修を加えた。
また、実際にVRを用いて研修を行うのは、グリーの社員ではなく研修会社のスタッフだ。研修会社とは企画段階から打ち合わせを行い、テキストとのすり合わせを行っている。VR映像と座学の組み合わせを考慮し、テキストや映像の構成を変更することもあるそうだ。
岩永さんは「グリーは研修会社ではありません。門外漢がいきなり参入しても市場を動かすことは不可能です。市場に精通しているプレイヤーといかに連携していくかが大切です」と話す。
研修への工夫は、これだけではない。同じ趣旨の研修でも、企業の状況に応じて異なる内容のVR映像を制作する場合もある。例えば、ワーキングマザーの働き方に関する研修については、制度の活用が進んでいる企業では女性が活躍しているシナリオを、活用が進んでいない企業ではバッドシナリオを流すという具合だ。岩永さんは「VR体験を通じて、マインドセットを変えてもらいたい」と狙いを明かす。
受け身の研修は「壮大な時間のムダ」
VRといえば、ゲームを中心とした消費者向けのコンテンツが目立つ。そうした中、今回のコンプライアンス研修のプログラムは、大手企業を含む約40社から問い合わせを受けるほどヒットしている。
岩永さんは、技術の進展によってVR機器が比較的安価になったことや、映像編集ソフトが普及し、作業負荷が減少してきたことから、法人向けビジネスの勝ち筋が見えてきたという。5月末には、企業に対して職場でのパワハラ防止を義務付ける関連法が成立。20年春にも施行される見通しで、追い風になりそうだ。
岩永さんは「漫然とした受け身の研修は“壮大な時間のムダ”。そうしたムダをなくしていきたい」と意気込んでいる。
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