マクドナルドの「踊るだけ」宣伝動画、商品訴求はなし それでもTikTokでバズった理由とは
TikTokを運営するByteDanceがインターネット・マーケティングフォーラム2019でセミナーを開催した。
若者を中心に人気を集めるスマートフォン向けショート動画共有アプリ「TikTok」(ティックトック)。ユーザーは、あらかじめ用意された音源にユニークな振り付けを当てて編集した自撮り動画を投稿し、それを見た人が振り付けをまねて撮った新たな動画を投稿する──そんなサイクルが生まれている。
TikTokをマーケティングに活用する企業も徐々に増えてきた。日本マクドナルドは「ティロリチューン」と名付けたプロモーションを2019年3月にスタート。「ポテトを揚げるフライヤーの通知音」をイメージしたオリジナル楽曲にあわせて、モデルが15秒間踊るだけという動画をTikTokに投稿した。このプロモーションにはどのような効果があったのか。
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日本マクドナルドが投稿した動画内に商品の直接的な訴求は一切なく、モデルが商品についてレビューをするわけでも割引キャンペーンを提示するわけでもない。しかし、耳に残るメロディーが人気を呼び、TikTokユーザーの若者が振り付けをまねして踊った動画が次々と投稿、拡散されていく“バズ”状態になった。
「これからの時代は『特に意味はないけど楽しい』がマーケティングのポイントになる」――こう話すのは、インターネット・マーケティングフォーラム2019(6月4〜5日、ANAインターコンチネンタルホテル東京)に登壇した、TikTokを運営するByteDanceの日本法人で広告企画などを手掛ける鈴木瑛さん(X Design Center)だ。
鈴木さんによれば、現在支持されている企業マーケティングの考え方として、2004年に提唱された、消費者が商品を認知してから購入に至るまでの行動をモデル化した「AISAS」(アイサス)がある。消費者は商品を知り(Attention)、興味を持ち(Interest)、検索する(Search)、そして商品を購入し(Action)、使い心地をSNSなどで共有する(Share)というものだ。
これまではAISASを基に消費者の欲求を考えて行動を促すことが重要とされてきた。しかし、現在はモノやサービスが世の中に溢れ、消費者は特別欲しいものもなく、商品について検索する動機もない。つまり欲求を起点としたマーケティングが難しくなっているという。
そんな背景を踏まえ、鈴木さんは「これからのマーケティングにおいて重要なのは、Wishes(願い)とWhimsical(気まぐれ)だ」と説明。Whimsicalは直訳すると「気まぐれ」だが、「特に意味はないが楽しい」といった意味が込められているという。
冒頭のマクドナルド事例はWhimsicalにあたる。動画を見ても「商品を購入することでおいしいものが食べられる」といった直接的なメリットは読み取れないが、「友達と一緒に動画を撮ったり、見たりすることが楽しそう」という理由から、店舗に行くきっかけを与え、商品を購入する行動に結び付く。
「『特に意味はないけど楽しい』コンテンツが今までのマーケティング手法よりも人を動かす時代になっている。消費者に理性的に考えて検索することを求めるのではなく、共感を誘うのが重要になるだろう」(鈴木さん)
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