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「君、今日からクラウド担当ね」 未経験者が1人で始めた、ファミマのAWS移行の舞台裏(2/2 ページ)

「AWS Summit Tokyo 2019」のセッションに、ファミリーマートでクラウド移行の責任者を務める土井洋典さんが登壇。土井さんは、前任者が突然退職したため、ある日突然上司からクラウド担当を任された経験を持つ。たった1人でのスタートだったというが、どうやってAWS移行を成功させたのだろうか。

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社内に“根回し”して優秀な人材をゲット

 ルールを固めた後は、組織の強化に着手。土井さんはチーム内のファミマ社員を増やすため、社内の優秀な人物をクラウド部隊に異動させるように根回しをした。

 「ITに詳しい社員に働きかけ、『ちょっとだけ参加してほしい』と打ち合わせに何度も呼びました。(周囲に)気付かれないように少しずつ仕事を頼み、『気付いたらうちのグループにいる』という状態を作ってしまいました。今は同じチームで働いていますよ」

 ベンダーからもクラウドに詳しいメンバーが参加し、心強い仲間を迎えた土井さんたちは、部内の役割分担を明確にした上で、AWS移行に備えてPoC(概念実証)を実施。(1)単純移行した場合、(2)移行時にOSを変更した場合、(3)移行時にデータベースを変更した場合――の3パターンに分けてコストを試算し、良好な結果を得た上で、ファミマ上層部の承認を取り付けた。

 そしていよいよ、18年半ばからAWSへの移行を段階的に開始。データ移行の際は前述のルールに従い、ファミマの既存インフラとAWS環境を専用線でつなぎ、両者を閉域接続する「AWS Direct Connect」を採用した。AWS上に構築した中継サーバ上で、データセンターの統合監視システムとAWSの運用監視ツール「Amazon CloudWatch」を連携させ、ハイブリッドクラウド環境を効率よくモニタリングする仕組みも作り上げた。

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ファミマのクラウド移行における方針

リソースの特性に応じてクラウド移行

 クラウド移行をスタートさせてから約半年がたった18年末からは、さらなるシステム最適化を目的に、サーバレスコンピューティングの導入を始めた。ただ、全てのシステムをサーバレス化すると手間がかかるため、社内システムを3つに分類し、それぞれの特性ごとに異なる対応を取った。

 具体的には、Webサーバやデータベースは「Amazon Elastic Compute Cloud」や「Amazon RDS」に単純移行。一部のデータベースはオープンソースのものに切り替えてコスト削減を図った。効果が大きいと判断した場合のみ、複数のシステムを統合し、AWS上に再構築してサーバレス化を行った。

 「システム構成、保守期限が切れる時期、ランニングコストなどを洗い出し、どのパターンで移行するのが最適かを検討しました。サーバレス化する際はスピードとコストを考慮し、全てのプログラムを書き換えるのではなく、既存のプログラムを『Docker』などのコンテナに乗せ、『AWS Fargate』上で動かす方法を選びました。事前にプロトタイピングや性能検証を行い、どういう影響があるのかを予測した上で移行しました」

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社内システムを3つに分けた上で移行を始めた

 こうしてファミマのAWS移行は軌道に乗り、運用の効率化を段階的に実現している。土井さんは「さらなるAWS移行を推進していきたいです」と意気込む。

 移行をさらに進めるため、ファミマはチームの体制を強化。社外メンバーも継続的に参加しているが、19年には「クラウド推進グループ」という社内部門として独立し、正社員を計4人、派遣社員を計2人に増やした。同部門は現在、ベンダーと共同で、AWSを利用した新システムの開発も進めている。

 試行錯誤を重ねながらも、ファミマのクラウド部門の土台を1人で築いた土井さんは、セッションの最後に「もしいきなりクラウド担当になったら、知識のある外部人材を積極的に活用しながら、社内で説明会を開いて(クラウド移行の)ムードを作ることが大事です。適合性や課題が分かるため、移行の際は実証実験をやるべきですし、移行パターンは複数用意するといいでしょう」と聴衆にアドバイスを送った。

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ファミマのAWS移行を時系列順にまとめた表
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