AWSを使って問診票作成、薬剤師の接客改善――盛り上がる「クラウド×医療」(2/2 ページ)
テクノロジーを駆使して医療を効率化・高度化する「ヘルステック」の分野が活性化している。「AWS Summit Tokyo 2019」に、「クラウド×医療」ビジネスを手掛けるベンチャー2社が登壇。AWSを活用した事業内容とその意義を紹介した。
クラウドで薬剤師の接客を改善
16年に創業したカケハシ(東京都中央区)は、AWSベースの薬局向けSaaS「電子薬歴 Musubi」を開発・提供している。患者の既往歴、服用中の薬、生活習慣などのデータを入力すると、個々人に応じた服薬指導と生活習慣のアドバイスを自動生成し、タブレット上に表示するサービスだ。
薬剤師は患者に画面を見せながら質の高い指導ができる他、患者の薬歴を記した書類(電子版)の下書きを自動作成できるため、働き方の効率化につながるとしている。
同社の中尾豊CEO(最高経営責任者)は「薬局は全国に約6万店存在し、コンビニより多い。薬剤師と患者は、全国で年に8億回接触しているとの試算もある。だが、薬剤師は裏側で処方箋の妥当性を確かめるなど重要な作業をしているものの、肝心の接客は薬を手渡すだけになっている」と指摘。
「この状況はもったいない。(クラウド上のデータを活用して)接客時にアドバイスができれば、高齢者の安心につながる。高齢者には、スマホを使いこなして情報収集するのが難しい人もいるため、薬の説明や食事・運動の指導を対面で行えば、健康維持への自然な動機付けができる」(中尾CEO)という。
中尾CEOは、AWSを活用している理由について「データがクラウド上にあると、提携する薬局間でデータを共有でき、患者が『おくすり手帳』を忘れた場合に、既往歴と薬歴を瞬時に確認できるメリットがあるため」などと説明。
「将来的には“医療のプラットフォーマー”となり、電子カルテとの連携や、遠隔からの利用などに対応したい。(薬局向けシステム市場は)オンプレミスの製品が多いが、当社はクラウド活用によって(顧客満足度と業務効率を高めることで)薬局の経営状態を改善していきたい」と話した。
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