「すごくリアル」と話題――“アンドロイド演じるお姉さん”に聞く「似せる」ための苦労(1/2 ページ)
企業のプロモーション動画やイベントなどで“アンドロイド役”を演じているモデルの高山沙織さん。昨年は3DCG女子高生「Saya」のコスプレ、今年4月には「不気味の谷」を再現した動画を公開し、ネット上で話題を呼んでいる。アンドロイド役を演じ続ける中で、どんな試行錯誤をしているのか。
「すごく不気味だ」「人間なのか、アンドロイドなのか、だんだん分からなくなる」――今年4月、ある女性がTwitterに投稿した動画が、ネットユーザーたちをざわつかせた。投稿者は、企業のプロモーション動画やイベントなどで“アンドロイド役”を演じているモデルの高山沙織さん(@saotvos)。動画では、ロボットなどを本物の人間に似せようとすると、ある段階で気持ち悪く見えてしまう「不気味の谷」現象を再現している。
これまでも高山さんは、ゲーム「Detroit: Become Human」に登場するアンドロイドや、全て3DCGで描かれた女子高生キャラクター「Saya」に扮したコスプレを披露し、「CGのキャラクターが現実世界に出てきた」などと話題を呼んできた(関連記事)。
いつしか「アンドロイドのお姉さん」を名乗るようになった高山さんは、よりアンドロイドらしさを求め、演技の“アップデート”を続けている。不気味の谷を再現した動画は、そんな研究成果の1つだ。アンドロイド役を演じ続ける中で、どんな試行錯誤をしているのか。
アップデートの情報源は「ファンからの返信」
高山さんが4月に投稿した動画は「不気味の谷までもどる研究」と題したもの。アンドロイドになりきった高山さんが笑みを浮かべて手を振るという数十秒のムービーだ。ロボットやアンドロイドの外見や動きが人間に近づくほど、見る人の好感度は増すが、ある段階になると好感度が下がり、かえって不快感を覚えるようになる――そんな不気味の谷を再現。固い表情やぎこちない動きに、ネット上では「すごい」「一部、機械化している?」などの声が上がった。
これまで「3DCGっぽい」「リアルだ」と評価されることが多かった高山さんだが、今回は意識して不気味の谷を再現したと話す。特に力を入れたのは目線や顔の動きで、前方を真っすぐ見つめながら首だけを水平に動かすなど、人間離れした動きを心掛けたという。目のハイライトを消すためにカラコンも着用。髪形やコスチュームは、日本テレビのアンドロイドアナウンサー「アオイエリカ」を意識したそうだ。
高山さんの投稿へのリプライをみると、ファンからは「ゆっくりしたうなずきがあると、より人工物に見えるかも」というアドバイスや、「最後のカメラ目線は『人』に感じた」などのダメ出しもある。
高山さんは、今回の動画以外にもアンドロイドを演じた写真・動画をTwitterやInstagramに投稿。SNS上の反応を参考に演技に磨きをかけ、「投稿しながら(アンドロイドに)似せる方法をアップデートしている」という。
ファンから届くダイレクトメッセージやコメントを通じ、アンドロイドやバーチャルアイドルの最新情報を知ることもある。以前に比べると、アンドロイドやAI(人工知能)を題材にした映画にも興味を抱き、鑑賞するようになった。最近では「北欧ではICチップを体内に埋め込んでいる人間が増えている」というニュースを知り、興味が湧いたという。「アンドロイドの演技をしていると、フォロワーから情報が集まるし、自分も新しいテクノロジーに興味を抱くようになる」
こうした日々の積み重ねもあってか、高山さんが企業のプロモーション動画でアンドロイド役を演じる際は、撮影現場の監督やメイクアップアーティストから意見を求められるようにもなった。「メイクさんからは(光沢がない)マットメイクにすべきかどうか、監督からは手の動きや表情について意見を求められた。指導も特になく、演技を任せてもらえるようになった」と高山さんは笑う。
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