「クラウドは大都市だけのものではない」――関西初のAWS Summit、社長が「西日本への注力」強調(2/2 ページ)
アマゾン ウェブ サービス ジャパンが「AWS Summit Osaka 2019」を大阪・梅田で開催。2018年は大阪北部地震の影響で中止となったため、関西でAWS Summitを開くのは初めて。基調講演に長崎忠雄社長が登壇し、西日本での事業展開に注力する方針をあらためて強調した。
62歳が「Amazon Connect」導入
基調講演にはこの他、ゲストスピーカーとして琉球銀行の伊禮(いれい)真氏(営業統括部 メディア戦略室 室長)、京セラの藤田正則氏(経営管理本部 経営情報システム部 副部長)、ヌーラボ代表取締役の橋本正徳氏が登壇。AWSの活用法などを説明した。
例えば、琉球銀行の伊禮氏は、日本市場でのローンチ当初からAWSに興味を持ち、社内外で勉強会などを開催。役員を集めた合宿にアマゾン ウェブ サービス ジャパンから担当者を招き、「クラウドとは何か」「メガバンクではどんな(活用の)動きがあるのか」などを教わる機会を設けてきたという。
頭取がクラウド活用に理解を示したこともあり、既にコーポレートサイトの基盤をAWSに移行。17年秋には、コールセンター業務への「Amazon Connect」導入に向けた開発をスタートした。電話をかけてきた顧客に要望などをテンキーで入力してもらい、通話の前にオペレーターに通知するシステムを構築し、7月から正式導入する予定という。
このシステムを構築したのは、同行を定年退職後に再就職した62歳の人物で、「GitHub」「Qiita」を参照しながら1人で作り上げたという。伊禮氏は「顧客からの期待を超えるには驚きが必要だ。日本一大きい銀行にはなれないが、日本一チャレンジングで面白い銀行になりたい」と語った。
課題を克服し、西日本のクラウド活用をサポート
一方、商用データベースやWindows環境のAWS移行については、いくつかの課題も指摘されてきた。
これに対して長崎社長は「AWSでは15種のデータベースを用意し、商用データベースの性能と可用性を保ちながら低コストを実現できる仕様にした。Amazon Redshiftは2年間で200以上の機能追加を実施し、性能を10倍にした」と説明。
Windows環境については「東京リージョンで3月に『Amazon FSx for Windows Fileserver』をリリースし、ハードウェアの管理、OSのアップデート、バックアップを全てAWS側で行う体制にした」と強調した。
今後も機能改善を進め、西日本でも“顧客志向”のサービスを展開する方針だ。長崎社長は「西日本のクラウド活用、カスタマーエンゲージメントの向上、デジタライゼーションをしっかりサポートしていきたい」と力を込めた。
関連記事
- AWSのビジネス戦略、改めて顧客志向を鮮明に AWS Summit Tokyo 2019基調講演
AWS Summit Tokyo 2019の基調講演レポート。他社との比較をほとんど行わないAWSが追求するものは? - 「君、今日からクラウド担当ね」 未経験者が1人で始めた、ファミマのAWS移行の舞台裏
「AWS Summit Tokyo 2019」のセッションに、ファミリーマートでクラウド移行の責任者を務める土井洋典さんが登壇。土井さんは、前任者が突然退職したため、ある日突然上司からクラウド担当を任された経験を持つ。たった1人でのスタートだったというが、どうやってAWS移行を成功させたのだろうか。 - PayPay“100億円祭”の裏側で何があったのか システム障害と苦闘したエンジニア
PayPayで昨年12月に展開した「100億円あげちゃうキャンペーン」。その間、ユーザー数の増加に伴い、PayPayのシステムは不安定な状態に。押し寄せる膨大なアクセスに、PayPayのエンジニアはどのように対応したのか。 - 名刺管理のSansan、「ほぼ手作業」だったデータ入力はどう進化した? CTOが語った軌跡
「AWS Summit Tokyo 2019」のセッションに、Sansanの藤倉成太CTO(最高技術責任者)が登壇。創業時(2007年)から現在までの歩みを振り返った。かつてはオペレーターが名刺情報を手入力していた同社は、データ化の手法をどう進化させてきたのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.