“アイデア出しまくるAI”を開発、博報堂が考える「創造力の限界突破」:これからのAIの話をしよう(ブレスト編)(5/5 ページ)
AIは「創造力」を持っているのか。人間のクリエイティブな領域を支援する“ブレストAI”の開発担当者に聞いた。
赤松さんは創造性について、次のように述べます。
「本当の創造性は、アイデアを出す能力ではなく、良いアイデアを選ぶ能力なんです。選ぶ作業に時間を使った方がいいから、作るのはAIに任せてもいいんですよ」(赤松さん)
良い悪いを判断するには、センスが求められます。筆者は現職のデコムで消費者のインサイトを発見する業務をしており、そこではバイアスや思い込みからの脱却が重要になってきます。いかに人間が偏った視点で価値判断をしているかを日々痛感しているのです。
では、選ぶ能力を磨くにはどうすればいいのでしょうか。赤松さんは「プロのクリエイターは“いちゃもん”をつけるのが得意なんですよ」と笑います。良い“いちゃもん”をつけることで、常識が分かるようになり、やがてその常識から離れた着想が生まれるそうです。
しかし、人間に対していちゃもんをつけるのは勇気がいるものです。「人のアイデアにダメだししていいのかな?」と尻込みする人もいるはずです。そこで、AIがダメだしする良き相手役になってくれるのです。
「AIはどんどん案を出してくれるので、人間側でダメだと思ったものはどんどん切り捨ててください。そのうち『あれ、何でダメなんだっけ?』と、探しているアイデアや切り口との差分を感じ取れるようになります。良いヒントがあれば良い内容が思い浮かぶものなので、より方向性や到着点がはっきりすると思いますよ」(八幡さん)
取材後記
人間は、人間が思っている以上に、人間について分かっていない。特に、人間が当たり前のようにできてしまう領域は、当たり前すぎて「なぜ」を説明できない――AIに関する取材をする中で、こんなことを感じていました。
クリエイティブの領域は、言語化や明文化が難しいジャンルの筆頭でしょう。今回の取材を通して、「作る」はAIに任せた方がいい作業なのではないかと思うようになりました。
「考える(フリをする)」という仕事はAIに手伝ってもらい、私たち人間は何らかの価値を生み出すことに集中しなければならないのかもしれません。
著者プロフィール:松本健太郎
株式会社デコム R&D部門マネージャー。 セイバーメトリクスなどのスポーツ分析は評判が高く、NHKに出演した経験もある。他にも政治、経済、文化などさまざまなデータをデジタル化し、分析・予測することを得意とする。 本業はインサイトを発見するためのデータアナリティクス手法を開発すること。
著者連絡先はこちら→kentaro.matsumoto@decom.org
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