「日本はAI後進国」「早く自覚してほしい」 ソフトバンク孫社長が憂慮
ソフトバンクグループの孫正義社長(兼会長)が「日本はAI後進国になってしまった」と発言。「投資したくても、日本ではAI関連ユニコーン企業がまだ生まれていない」と指摘する。
ソフトバンクグループの孫正義社長(兼会長)が7月18日、イベント「SoftBank World 2019」に登壇し、「日本はAI後進国になってしまった」と話した。同社は“10兆円ファンド”こと「SoftBank Vision Fund」(ソフトバンク・ビジョン・ファンド)を立ち上げ、世界中のAI関連のユニコーン企業に相次いで投資しているが、孫社長は「投資したくても、日本ではそうした企業がまだ生まれていない」と指摘。「手遅れではないが、目覚めないといけない」と主張した。
25歳でホテル王に ソフトバンクが集める“AI起業家”
孫社長は、同社が成長していくための組織モデルとして「AI群戦略」を掲げている。ソフトバンク・ビジョン・ファンドを通じ、交通や金融、医療などの各分野でAI関連のサービスを提供するユニコーン企業に重点的に投資し、傘下に収めている。
例えば、13年に創業したインドOyo Hotels and Homesは、現在では80カ国で110万以上の客室を提供するなど、世界第2位のホテルチェーンに急成長している。
競合のホテルチェーンは、出店場所を決める際、収益性の検証や物件契約の手続きに6〜12カ月を要するというが、OyoはAI技術を活用して「長くても5日間」に短縮。客室の稼働率を向上させるため、客に好まれる内装デザインを分析したり、1日に5000万件以上の客室の価格を変更したりしているという。
孫社長は「Oyoの創業者リテッシュ・アガーウォールCEOは、まだ25歳。親から事業を引き継いだわけではなくゼロからスタートしたが、数カ月後には世界最大のホテル王になるだろう」と期待を寄せる。
この他、東南アジアを中心にタクシー配車サービスを提供しているGrabも、孫社長は「(現地で)ナンバーワンの企業」とアピール。天気や交通量、需要の予測から価格を決定し、配車依頼から数分以内にタクシーが到着するよう調整しているという。
同社は配車サービスだけでなく、モバイル決済、フードデリバリーなどの領域にも進出。「週末にヨガのジムに行く」といったユーザーの振る舞いから、健康志向の食事を提案するなど、分野をまたいだサービスを提供している。
日本も「手遅れではない」
孫社長は「こうした“AI起業家”たちは、理論を考えるだけでなくビジネスの現場でAIを利用し、自分たちの業界を革新している」と強調する一方、日本からはAI関連のユニコーン企業が生まれていないと現状を指摘した。
「AIを中途半端にかじった評論家、学者が『AIに何ができる』と低く評価するのは、時代錯誤も甚だしい。(AIの活用を始めるのは)いまからでも手遅れではないが、かなり遅れている状況だ。日本の政府、知識人、ビジネスマンには1日も早く自覚してほしい」(孫社長)
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