アスクル社外取締役らが声明文、ヤフーの議決権行使を批判 「深く憂慮する」「ガバナンスを蹂躙している」
ヤフーがアスクルの岩田彰一郎社長と独立社外取締役3人の再任に反対する議決権を7月25日に行使した。この件について、アスクルの独立役員会が「深く憂慮する」との声明文を発表した。同会は、23日の記者会見に続き、ヤフーの手法は、上場企業に求められるガバナンスを無視していると再び批判した。
アスクルの社外取締役・社外監査役からなる「独立役員会」は7月28日、経営などを巡って対立する親会社のヤフーが、アスクルの岩田彰一郎社長と独立社外取締役3人の再任に反対する議決権を行使した件について、「深く憂慮する」との声明文を発表した。
アスクルの独立役員会は、同社取締役会の依頼に応じて、客観的な立場から助言を行っている組織。元松下電器産業(現パナソニック)副社長で、アスクル独立社外取締役の戸田一雄氏ら6人が所属している。戸田氏を含め、ヤフーが再任に反対している独立社外取締役3人は同会のメンバーだ。
同会は、ヤフーが独立社外取締役にも退陣を求めたことを特に問題視。3人が退任した場合、アスクルの社外取締役は、ヤフーが派遣している小澤隆生氏(ヤフー常務執行役員)と、約11%の株式を持つ第2位株主プラスの今泉公二社長のみとなる。
同会は「定時株主総会後のアスクルには、東京証券取引所の求める独立性を満たした社外取締役がいないという異常事態になる」「独立社外取締役の役割・責務を真っ向から否定し、上場子会社のガバナンスを蹂躙(じゅうりん)している」と怒りをあらわにしている。
対立の経緯は?
ヤフーは現在、アスクルの約45%(議決権ベース)の株式を持つ筆頭株主。岩田社長にはECサイト「LOHACO」とアスクル全体の業績悪化を招いた点、社外取締役には同社長を任命した点などの落ち度があるとし、アスクルが8月2日に開く株主総会で再任に反対する議決権を行使したと発表。プラスも同様の発表をしている。
ヤフーの方針をあらためて批判
このままでは岩田社長に加え、独立社外取締役の退任も避けられない状況だが、アスクルの独立役員会は声明文で「(同会は)ヤフーとの利益相反関係を適切に監督しつつ、少数株主の意見を中立的な立場からアスクル取締役会に伝える責務を果たしてきた」と正当性を主張。
「(ヤフーが)資本の論理を振りかざして支配株主の意に沿った経営体制を取るべく進めようとしてくるのであれば、上場子会社でのガバナンスは全く機能せず、独立社外取締役による支配株主との利益相反に対する監督などできない」と、ヤフーの方針をあらためて批判している。
同会は7月23日にも記者会見を開き、ヤフーの方針を「ガバナンス無視だ」と批判していた。その行動も「決して現経営陣を支持する偏ったものではなく、独立した立場から中立的な意見を表明したもの」としている。
声明文にはこの他、「親子上場を許容している日本の資本市場で、上場子会社でのガバナンスの在り方、そこで独立社外取締役・独立社外監査役が果たすべき役割についての議論が深まり、正しいガバナンス順守の社会が1日も早く訪れることを期待している」などの記載がある。
アスクルは最終手段を講じる予定
アスクルは現体制を維持するための最終手段として、ヤフーに対して株式の売り渡し請求権を行使するため、8月1日午後に取締役会を招集する予定だ。ヤフー側は、応じるか否かを7月29日午前時点では明らかにしていない。
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