独自開発のブロックチェーンで高速な処理を実現
ネット接続できるエアコンを使っている筆者だが、このエアコンが排出する温度設定や運転時間のデータは、メーカーのサーバに蓄積されているはずだ。利用規約によると、それら情報を「取得してサービス向上に利用する」といった趣旨のことが明記されているが、データの所有権についてはまったく触れられていない。
これは筆者の想像だが、ユーザーが増えるに従い、将来的には得られたデータを個人情報保護法や利用規約に抵触しない範囲内で、メーカーとして第三者に販売することも視野に入れているのではないか。ホームオートメーションの機器を製造するメーカーであれば「宝の山」を狙って当然だろう。
そんな理由から、ジャスミーが言う「データの所有権は機器ユーザーのもの」という明確な考え方には好感を覚える。ただ、ここで1つの疑問が湧く。家電向けのIoTプラットフォームを提供するのであれば、各家電メーカーがそのプラットフォームに参加しないことには意味がない。そうしないとデータが集まらないので、データマーケットを組成するというビジネスモデルが成り立たない。メーカーはユーザーを囲い込み、自社サーバ等でデータビジネスを実現させたいのではないか。
しかし、吉田副社長は「従来の中央集権型のサーバでシステムを構築していたのでは、ユーザーが増加すればするほど、コスト的に見合わなくなる」というのだ。
確かに情報漏えいなどセキュリティ対策も万全に実施するとなると、サーバ運営のコストがかかりそうだ。そして、それだけコストをかけたとしても、経済合理性で説明できる利益を生む保証はない。
ジャスミーが提案するブロックチェーンで構築するIoTプラットフォームであれば、高いセキュリティレベルを維持しながら、低コストでネット家電などのIoT機器がつながる仕組みをユーザーに提供できるというわけだ。
つまり、「ジャスミーのIoTプラットフォームにみんなで相乗りしましょう!」という話となる。「こういったプラットフォームは、1社で実施するのではなく、業界を挙げて推進しなければ意味がない。ユーザーの信用も得られない」(吉田副社長)という。
なるほどと思う。だが、ブロックチェーンの仕組みを考えると、懸念材料もある。やりとりするデータの承認に時間がかかるのではないのか。例えばビットコインの場合、トランザクションの認証に約10分を要する。スマホのアプリで、エアコンのスイッチを入れたとして、動き出すまでに10分もかかったら話にならない。
しかし、「パートナー企業であるニュージーランドのセントラリティ社と独自のブロックチェーンの仕組みを共同開発した。これならトランザクション承認は1秒で完了する」(吉田副社長)と胸を張る。
「まずは、10〜20社の参画を目指し、将来的には100社以上の企業がジャスミーのIoTプラットフォームに参加する世界を構築したい」(吉田副社長)と目標を掲げる。
ユーザーの初期導入コストや企業側の運営コストがネックとなり遅々として進まないホームオートメーションの普及だが、ジャスミーのIoTプラットフォームが明るい未来を見せてくれるだろうか。
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