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欧州との差は開くばかり IFAで聞いたコネクテッド家電の現在体当たりッ!スマート家電事始め

今年はIFAの会場でちょっとした異変があった。昨年まで大々的にアピールしていた「コネクテッド家電」という言葉があまり聞かれなくなったのだ。なぜか。

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 今年もドイツ・ベルリンで開催されたエレクトロニクスショー「IFA 2019」(9月6日〜11日)。最新の家電展示会としては世界最大級を誇るIFAで、今年はちょっとした異変があった。昨年まで大々的にアピールしていた「コネクテッド家電」という言葉があまり聞かれなくなったのだ。


「IFA」の会場になったメッセ・ベルリン

 とくに欧州のメーカーでその傾向が顕著だった。例えば、日本ではあまり馴染みがないかもしれないが、電動工具で知られるBosch(ボッシュ)や通信機器のSiemens(シーメンス)は、白物家電の大手メーカーとして地元ドイツはもちろん欧州域内でとても人気のあるブランド。日本でも高級家電ブランドとして知られるMiele(ミーレ)を含め、欧州各社は昨年に比べてコネクテッド機能に関する展示が総じて控えめだった。

 市場に受け入れられずに諦めたわけではない。各社のブース担当者に聞くと、口をそろえてこう話した。「もうプレミアムモデルからミドルクラスまで、ほとんどがコネクテッド家電になっている。今さら強くアピールする必要はない」。

 改めて各社の製品を見ると、洗濯機から冷蔵庫、ロボット掃除機に小型のオーブントースターまでコネクテッド機能を搭載する家電のカテゴリーはとても幅広く、プライスレンジもさまざま。メーカーによってはエントリーモデルにまで簡単なスマホアプリとの連携機能が浸透している。いまだに上位機種の付加価値として扱っている日本メーカーとの違いを感じた一方で、別の疑問もわいてくる。「コネクテッドは当たり前」の状況で、欧州の家電各社はどこで差別化を図ろうとしているのか。

 ボッシュやシーメンスは、家電の「本質的な価値を磨く」方向に回帰したようだ。例えばボッシュがIFAで発表した2019年の最新プレミアム家電は、冷蔵庫、洗濯機、食洗機などの「Silence Edition」。つまり静粛性に注力したモデルだった。


ボッシュの「Silence Edition」

 ミーレは、コネクテッド機能を「縁の下の力持ち」として、機器間の連携による自動化を進めている。同社は2年ほど前からユーザーインタフェースとしてAmazon Alexaのボイスコントロールを採用しているが、今年はディスプレイ付きのスマートスピーカー「Echo Show」を並べ、画面に表示された調理ナビゲーションが同社製IHクッキングヒーターやオーブンを制御する「Cook Assist」機能を披露した。


画面に表示された調理ナビゲーションが同社製IHクッキングヒーターやオーブンを制御する「Cook Assist」

 コネクテッド家電だからといって、あまり使われない機能を増やしても意味はない。元から期待されている調理家電としての機能をアプリやAIのチカラでより使いやすくする、というスタンスだ。

 一方、欧州にも進出している韓国のLG ElectronicsやSamsung(サムスン)、中国Haier(ハイアール)などアジアの家電メーカーは、逆にコネクテッド家電の充実ぶりを力強くアピールした。中でも欧州メーカーとは全く異なるコネクテッド家電の未来図を描いたのがLGだ。同社は家電のインテリジェンスを高め、新たな可能性を見いだす方向に舵を切った。

 LGは5Gスマートフォン開発などで密接なパートナー関係を築いている米Qualcomと組み、コネクテッド家電専用のパワフルなSoCを開発する。多種センサーから取得した情報をAIで解析し、複雑な処理も素早くこなす。


コンセプトモデルの「VISION PACK」

 このSoCを使ったコンセプトモデル「VISION PACK」は、ホームクリーニング機の「LG Styler」に装着し、衣類の種類や素材、色合いなどを検知、最適なクリーニングコースを設定するというものだ。

生活を変えるコネクテッド家電

 ベンチャー企業が手がけたユニークなコネクテッド家電が目立ったのも今年のIFAの特長だ。

 例えばボッシュと提携したフィンランドのベンチャー企業、Plantuiが開発した「SmartGrow」は、ミニ野菜やハーブを自宅で栽培できる屋内用スマートガーデニングキットだ。欧米では人工食肉の研究などテクノロジーの力で人口増に伴う食糧不の課題を解決するためのビジネスが活発化している。収穫量は少ないものの、「先進的な生活者層から食糧問題に対する意識を高めてもらう」のが開発コンセプトだという。


Plantuiが開発した「SmartGrow」

 ベルギーのベンチャー企業、Lucimedが開発したスマートグラス「Luminette」は、日照時間が短い北欧州に暮らす人々を悩ませる「冬の季節性うつ」の解消に役立つパーソナルガジェット。毎日、20分から45分ほど身に着けて光を浴びるとと4、5日後から効果が表れるという。


内側のLEDで光を浴びる「Luminette」

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