第一生命、「Azure×IBMメインフレーム」のハイブリッドクラウド導入 データ保護と拡張性を両立
第一生命保険が、「Microsoft Azure」と日本IBMのメインフレームなどで構成されるハイブリッドクラウド基盤を構築し、運用を始めた。個人情報を保護しつつ、システムの拡張や運用を効率化する狙い。API連携を通じて、子会社などとの外部連携を強化する目的もある。
第一生命保険は10月10日、日本マイクロソフトのクラウドサービス「Microsoft Azure」と、日本アイ・ビー・エムのメインフレームなどで構成されるハイブリッドクラウド基盤を導入し、運用を始めたと明らかにした。今後は契約関係など機密性の高いデータをオンプレミス環境に残し、業務システムのクラウド移行を進めるという。
運用は9月末に始めており、現在は.NETアプリの移行を終えた段階。契約者が専用サイトにログインする際の認証システムや、キャンペーン管理システムなどもクラウドに移行する考えだ。
少子高齢化に伴う保険商品の増加・多様化を踏まえて、個人情報を保護しつつ、システムの拡張や運用を効率化する狙い。API連携を通じて、子会社などとの外部連携を強化する目的もあるとしている。
攻めと守りを両立
「生命保険会社はこれまで、保険金・給付金を確実に支払うことで、社会保障制度を補完する役割を担ってきた。だが現在は、高齢化が進んで社会環境が変わりつつある。病気の予防・早期発見も重要になり、保険商品もどんどん加わっている。こうした状況に対応できるよう、生保の内部の仕組みを変えたいと考えた」
システム移行を主導した、第一生命の若山吉史氏(ITビジネスプロセス企画ユニット長)は、日本マイクロソフトが開いた記者発表会でこう説明した。
同社は従来、メインフレームとオープン系システムからなるオンプレミス環境で全システムを稼働。新商品の発売などに伴って新機能が求められる場合は、その都度システムを開発して追加していた。そのため、子会社との顧客管理の共通化が難しい点や、スピーディーな拡張が難しい課題があったという。
だが、市況の変化に対応するためには「コスト削減などの『守りのIT』と、競争力向上のための『攻めのIT』という、異なる姿勢を併せ持つことが必要」(若山氏)と判断し、クラウド活用を決めたとしている。今後は“攻め”の一環で、クラウド上でのデータの蓄積・分析にも取り組む方針だ。
マルチクラウド環境も視野
現在は未対応だが、Azureの東西リージョンを活用し、BCP(事業継続計画)対策を進める予定もあるという。既存システムを移行するだけでなく、必要に応じてSaaSの導入なども検討する。他のクラウドベンダーのシステムと組み合わせたマルチクラウド環境を採用する可能性もあるという。
若山氏は「Azureだけがクラウドだとは考えていない。さまざまなサービスを適材適所で活用し、ホームグラウンドとなるシステム基盤を作っていきたい」と強調。「顧客向けのシステムだけでなく、社内システムもクラウド化する可能性もある。さまざまな選択肢を排除せずにみていきたい」と展望を語った。
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