Google、量子コンピュータで「量子超越性」を実証 特定の計算で“スパコン超え”
量子コンピュータの計算能力が、スーパーコンピュータなど従来型のコンピュータを上回ることを示す「量子超越性」を実証したと、Googleが発表。
米Googleは10月23日(現地時間)、量子コンピュータの計算能力が、スーパーコンピュータなど従来型のコンピュータを上回ることを示す「量子超越性」(Quantum Supremacy)を実証したと発表した。同日付の英科学誌「Nature」(電子版)に論文が掲載された。
乱数を生成する「ランダム量子回路サンプリング」という問題を量子コンピュータに解かせた。この問題は、最先端のスーパーコンピュータでは解くのに約1万年かかると見積もられるが、Googleの量子コンピュータは3分20秒で解き終えたという。
量子コンピュータは「量子ビット」(qubit)と呼ばれる情報単位を用いる。0と1だけでなく、その両方を重ね合わせた状態(量子の重ね合わせ)を表現でき、よりたくさんの値を扱える。そのため、十分なビット数を用意すれば、従来のコンピュータでは現実的な時間で計算しきれない問題を短時間で解けるようになる(量子超越性)と理論的には示されている。しかし、実際にハードウェアを実装していくにはさまざまな課題があり、これまで量子超越性が実証された例はなかった。
Googleは今回、53個の量子ビットを搭載する量子プロセッサ「Sycamore」を開発し、特定の問題では、従来型のコンピュータよりも計算能力が高いことを実証したとしている。同社は「量子コンピューティングの世界にとって、大きなマイルストーンを意味する」と主張している。
同社が量子超越性を実証したというニュースは、英Financial Timesが9月20日(現地時間)に報じ、議論を呼んでいた。これを受け、Googleと同じく53量子ビットの量子コンピュータ「IBM Q」を開発している米IBMが21日に反論。Googleが性能比較に用いた計算問題は、従来型のコンピュータだと約2.5日で解けるなどと指摘していた。Googleが今回、論文を公開したことで、より検証が進みそうだ。
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