「手数料を一方的に値上げ」「検索結果の基準が不透明」 デジタルプラットフォーマーの取引実態、公取委が報告書
公取委が「デジタルプラットフォーマー」の取引慣行の実態を調査した報告書を公開。オンラインモールとアプリストアを運営するデジタルプラットフォーマーと、利用事業者に聞き取り調査した。
公正取引委員会は10月31日、政府が「デジタルプラットフォーマー」と呼ぶ巨大IT企業の取引慣行の実態を調査した報告書を公開した(PDF)。オンラインモールとアプリストアを対象とし、運営するプラットフォーマーと利用事業者に聞き取り調査を実施。調査結果を踏まえ、運営事業者が手数料を一方的に引き上げたり、検索アルゴリズムを恣意(しい)的に操作したりする行為は、独占禁止法に違反する可能性があるなどと指摘している。
「手数料を一方的に値上げ」「検索結果の基準が不透明」
報告書では、オンラインモールとアプリストアの運営側の行為を(1)取引先に不利益を与え得る行為、(2)競合事業者を排除し得る行為、(3)取引先の事業活動を制限し得る行為、(4)公正性・透明性に欠ける恐れがある行為──の4つに分類。利用事業者から出た指摘内容と、それに対する運営側の反論をまとめている。
例えば(1)取引先に不利益を与え得る行為では、オンラインモールの利用事業者からは「規約の変更に対して同意を求められることなく、一方的な変更によって手数料を引き上げられたり、新しい決済システムを導入されたりした」という報告が出た。
これに対し、運営事業者は「手数料の値上げは、サービスの維持・向上を図る必要性、サービスに必要なコストの変動などの観点から検討している」「新しい決済システムの導入は、決済手段の増加、業務負担の削減、不正注文の対策強化などが目的」などと説明したという。
公取委は、両者の意見を紹介した上で「規約変更により、運営事業者が利用事業者に不利益を及ぼす場合には、独占禁止法上の問題(優越的地位の濫用)になる恐れがある」などと警告。運営事業者に対し、規約の変更前に十分な説明をすることや、利用事業者の意見を考慮すること、規約変更の通知から適用までに十分な期間を設けること──などを求めている。
また(4)公正性・透明性に欠ける恐れがある行為では、オンラインモールとアプリストアの検索アルゴリズムを巡り、運営事業者から不満の声が出た。
例えば、オンラインモール利用事業者からは「運営事業者は、検索・表示順位を自由に変えられる」、アプリストアの利用事業者からは「ダウンロード数やアプリ内課金の額に基づくと上位にあるはずのアプリが、検索の結果では不当に下位に表示されている。基準が不透明だ」という指摘が寄せられた。
運営事業者側は「検索順位を決める主要な要素を、利用事業者向けサイトなどで説明している。ただ、不正な対策を施した商品が上位に来ないように、検索の詳細なアルゴリズムは明かしていない」などと反論している。
これらを受け公取委は、運営事業者に対し、検索順位を決定する主なパラメータとそのウエイトを明らかにすることや、検索順位の上位を広告枠や自社関連商品とする場合には、消費者が誤認しないよう説明すること──などを促している。
「独占禁止法の執行だけでなく……」
公取委は、報告書の結びで「独占禁止法上、問題になる具体的な案件には、引き続き厳正・的確に対処していく」と強調。その上で、特に運営事業者が(1)どのように規約を変更しているのか、(2)利用事業者の取引データを自らの直接販売に利用していないか、(3)検索アルゴリズムを操作するなどして自己を優遇していないか──という点は、デジタルプラットフォーマーに特徴的な問題を含んでいるとし、注視するという。
一方で「独占禁止法の執行だけでなく、業法による適切な規制や、データの移転・開放を実現する仕組みの導入、個人情報の適切な保護など、さまざまな観点から検討・対応していく必要がある」との課題も明らかに。政府が新設した「デジタル市場競争会議」(議長は、菅義偉官房長官)での検討への参画や、関係省庁との連携・協力に取り組むとしている。
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