総務省、“動画見放題”をうたう通信サービスの提供ルール策定へ 「事業者の責任明確に」専門家から指摘相次ぐ
総務省はゼロレーティングサービスについての検討会で、サービスの提供ルールを定める指針案を公開した。通信事業者に対し、問題となる行為やとるべき対策などの具体例を示したものの、専門家からは表記上の不備について指摘が相次いだ。
総務省は11月12日、「動画見放題」「SNS使い放題」などをうたい文句にした通信サービスについて、消費者負担の公平性や透明性確保について検討するワーキンググループを開き、指針案を公開した。通信事業者に対し、「対象サービスの選定基準を明確化する」「必要としない消費者に十分な説明なく契約させない」などの基準を示したが、専門家からは表記上の不備など指摘する声が相次ぎ、指針の策定にはまだ時間が掛かりそうだ。
総務省は、2018年10月に「ネットワーク中立性に関する研究会」を発足し、国内の一部通信事業者が提供している「ゼロレーティングサービス」に関するルールを定めようとしている。動画サービスやSNSなど、一部サービスを利用する際のデータを通信料にカウントしない「ゼロレーティング」サービスには利点もある一方で、諸外国では否定的な面にも注目が集まっているという。
例えば、ゼロレーティングサービスは「対象に選ばれたサービスは集客に有利になるが、新規に参入した事業者は不利になる」「ゼロレーティングサービス提供のために非利用者の通信品質が低下する」などの問題が指摘されている。今回示した指針案では問題となる事業者の行為や対策などを例示した。
問題行為としては、(1)動画やSNSサービスを提供する事業者に対し、合理的な理由なく特定のサービスを優遇し、他を排除する(2)ゼロレーティングサービスを提供しようとするMVNO事業者に対し、接続料を高く設定する、(3)ゼロレーティングサービスを必要としない消費者に十分な説明をせずに契約させる、といった行為を挙げた。
通信事業者がとるべき対策としては、(1)ゼロレーティングの対象とするサービスの選定基準を公開して問い合わせ窓口を作る、(2)消費者個人の利用データ量を正確に計測し表示する、(3)基準値を超えて通信を行うユーザーに通信制限を掛ける場合はゼロレーティング対象のサービスでも一律に制限する、などを挙げている。
しかし、指針案の中には「通信事業者がとることが望ましい行為」といった表記があり、専門家からは「望ましいということは、義務ではないのか」(中央大学 総合政策学部の実積寿也教授)という声も上がった。議論は予定の終了時刻を過ぎても白熱し、次回の検討会までに修正や再考を求められた箇所が多数。総務省は、全てに対応できるか分からないとして、次回開催が延期になる可能性も示した。
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