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遺伝情報が長持ちする昆虫標本、市販の成分で安価に作成 1匹当たり約10円 兵庫県立大などが新技術
兵庫県立大学、京都大学、東京大学が、遺伝情報を長く保存できる昆虫標本の作製方法を開発。保湿剤などに使われる有機化合物「プロピレングリコール」を使用する。自然科学のさまざまな研究分野へ応用が見込める。
兵庫県立大学、京都大学、東京大学は12月24日、保湿剤などに使われる有機化合物「プロピレングリコール」に昆虫標本を漬けると、遺伝情報をより長く保存できることを発見したと発表した。研究チームが昆虫の脚部を漬けて保存したところ、1年後もDNAが劣化しなかったという。昆虫のDNA解析など、自然科学研究への応用を見込む。
プロピレングリコールは、食品や化粧品などにも使われている薬品で、Amazon.co.jpなどで市販されている。薬品と容器を合わせて、昆虫1体の標本を作るコストは10円程度であるため、アマチュアの昆虫愛好家も長持ちする標本を作れるという。
従来の昆虫標本の作り方は、乾燥させる方法やエタノールに漬ける方法が一般的だった。だが、乾燥させると作製から数カ月でDNAが劣化するため、遺伝子解析への応用が難しかった。また、エタノールの利用には保管にコストがかかるため、サンプルを多く作れない課題があった。
一方のプロピレングリコールは、安価に入手できる他、エタノールと同等の保存性能を持つことが実験で判明した。そのため、研究機関などは一連の課題を解消し、遺伝子解析で使うサンプルを多く製作できるという。
この研究成果は国際科学誌「European Journal of Entomology」の電子版に12月23日(英国標準時)付で掲載された。
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