「1億画素のスマホカメラ」に意味はあるか Xiaomi「Mi Note 10」の実力をチェック(3/4 ページ)
SamsungとXiaomiが共同開発した、1億画素のイメージセンサー「Samsung ISOCELL Bright HMX」を搭載したスマホ「Mi Note 10」で、スマホ向け1億画素撮影の実力を調べた。
ただ、れんがの壁の作例は2700万画素モードの方が明らかにはっきりと写っている。どちらの写真も中央をタップしてフォーカスを合わせてから撮影しているが、もしかしたら1億画素モードの際にうまくフォーカスが合わなかったのかもしれない。
紅葉の撮影時にフォーカスが後ろに抜けてしまい、手前になかなか戻ってこないこともあった。AFは像面位相差の他にレーザーAFとコントラストAFの方式を採用しているというが、被写体へのフォーカス合わせには少々課題があるように感じた。
シーンを変えて、夜間の撮影を見てみる。まだ撮影回数がそれほど多くないので断定はできないのだが、夜間撮影は意外というか、奇妙なことが起きた。
撮影前にはこういう想定をしていた。Bright HMXの画素ピッチは0.8マイクロメートルでとても細かく、1画素当たりは多くの光を取り入れられないので、夜間に1億画素モードを使ってもあまり良い結果が出ないはず。4画素を束ねた2700万画素モードを使うのが定石だろう、と。
そう予想した上で、撮ってみた結果が以下だ。
拡大してみるとすぐ分かるが、2700万画素の方が明らかにノイジーだ。ノイズのせいで、ファイルサイズも1億画素モードが13MB、2700万画素モードが20MBと逆転してしまっている。
2700万画素モードの写真は、AIが夜景と判断して夜景モードを発動させているはずなのだが、ユーザーが夜景モード撮影で求める結果は、1億画素モードの写真の方ではないだろうか。
ただ、では1億画素の夜景写真の方が情報量が多いかといわれるとこれも微妙で、2700万画素のノイジーな写真を平滑化などでうまく処理をすれば1億画素の写真に近づきそうな感じもする。
少なくとも、Mi Note 10の現在の処理系では夜景写真が得意という評価は下せない。
ちなみに、比較用に持ってきたPixel 4 XLでも同じカットを撮影した。
天の川を撮影できるような「コンピューテーショナルフォトグラフィー」(計算的写真術)のコンセプトで絵作りをしているだけあり、手前のビルを明るく写しつつ、奥の明るい道も白飛びを抑えた写真を撮影できた。Pixel 4 XLのメインカメラのセンサーサイズは1/2.5インチで、面積比でBright HMXの約4分の1にもかかわらずこれほどきれいな絵を出せるのは、さすがGoogleのAI処理といったところか。
その他、Mi Note 10を使ってみて分かったことをいくつか列挙する。まず、1億画素モードでの撮影時は保存に時間がかかり、完了するまで次の撮影ができない。保存には4〜5秒程度かかるので、さっと出して何枚か撮るようなシーンには向いていない。
これは1億画素モードに限らないが、写真の全体を明るく写そうとする傾向がある。その結果コントラストがあまりはっきりしない写真が出来てしまうことがあるので、シーンによっては露出を少しアンダーに振ると雰囲気のある写真にまとまる。
写真のファイルサイズは、被写体にもよるが基本的には20M〜30MB程度になる。2700万画素モードの1.5〜1.8倍程度の大きさだ。
まとめ:スマホに1億画素を載せる意味と、見えた課題
本記事の問いは「スマホに1億画素を載せる意味はあるのか」だった。1億画素モードで実際に細かい部分が撮れている作例を確認できたので、この問いに対する答えはYESだ。
しかし、実用性に関しては課題が浮かび上がる。保存に時間がかかることや、フォーカスがやや不安定なことは撮影上のデメリットであり、撮影後も写真のファイルサイズが1枚30MBと考えると100枚で3GB、1000枚で30GBとストレージを圧迫してくる。Mi Note 10はmicroSDでストレージを拡張できないので、撮影枚数によっては「Amazon Photos」など無圧縮で保存できるクラウドストレージに逃がす必要が出てくるかもしれない。
個人的な考えを述べると、1億画素という数字は衝撃的ではあるものの、1辺0.8マイクロメートルの画素はそれこそ1億画素の中判センサーの1画素に比べれば相当にS/N比が悪いはずで、等倍で鑑賞するものではないと思う。しかしそれなりに情報量のありそうな写りはしているので、例えば縦横それぞれ3分の1にリサンプリングして1200万画素の絵を作った方が、ファイルサイズ的にも扱いやすく、画質の良い写真が作れるのではないだろうか。
スマホ写真の高画質化という観点では、イメージセンサーの大型化は間違いなく良い影響をもたらすので歓迎したい。ただ、1億画素の写真をそのまま扱おうとすると上述したような課題も出てくるため、今後何らかの工夫は欲しいところだ。
Bright HMXはSamsungとXiaomiの共同開発品なので、おそらくSamsungもこれを搭載したスマートフォンを投入してくるだろう。それがGalaxyの次期フラグシップとなれば、ミドルレンジのMi Note 10とも計算リソース的に状況が異なるため、また違う絵作りになる可能性もある。
2020年のスマホのカメラは高画素競争が加速するのか、あるいはGoogleが示した計算的写真術のアプローチが増えるのか、もしくはこれらが統合されるのか──。スマホカメラの進化もまだまだ目が離せない。
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