東京地裁など、民事訴訟の争点整理に「Microsoft Teams」活用 意思疎通を円滑化、裁判の期間短縮へ
日本マイクロソフトが、複数の裁判所に「Microsoft Teams」を提供する。関係各所の意思疎通の円滑化と、裁判の期間短縮を目指す。提供先は、知的財産高等裁判所、東京地方裁判所、大阪地方裁判所など14カ所。
日本マイクロソフトは1月9日、複数の裁判所にビジネスチャットツール「Microsoft Teams」を提供すると発表した。導入した裁判所では、Teamsを活用して民事訴訟事件の争点整理を行う。当事者が裁判所に出頭できない場合でも、裁判官と資料を共有し、互いに表情を見ながら会話できるため、争点整理の円滑化が期待できるという。
Teamsを採り入れる裁判所は、知的財産高等裁判所、東京地方裁判所、大阪地方裁判所、名古屋地方裁判所(いずれも2月頃に利用開始)、横浜地方裁判所、さいたま地方裁判所、千葉地方裁判所(いずれも5月頃に利用開始)――など計14カ所。
各裁判所はこれまでも、遠隔地に住む当事者や裁判官が争点整理を行う際に、電話やテレビ会議システムを用いていた。だが、電話では資料や互いの表情を確認できず、協議が円滑に進まない課題があった。
また、テレビ会議システムは裁判所同士しか接続できないため、当事者は係属する裁判所とは異なる、最寄りの裁判所を訪問し、システムを利用する手間がかかっていた。裁判期日の調整を行う際に、弁護士などの裁判関係者が当事者が住む地域などに出張する負担も生じていた。
Teamsを活用した場合は、複数の訴訟関係者が遠隔地からWeb会議に参加できる他、資料や契約書などを画面共有したり、同時編集機能を用いて資料を共同制作したりすることが可能になる。これにより、関係者の出張費用の節約や、裁判の期間短縮を図る。
最高裁判所は今後、さらなるIT化に向けた法改正を視野に入れているという。将来的には、口頭弁論などにWeb会議を活用する他、訴状や準備資料の提出、手数料の納付、期日の進捗確認などをデジタル化し、さらに利便性を高める方針という。
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