ソニー銀行、勘定系システムをAWSに移行へ 大阪リージョン開設を機に決断、クラウドオンリーな銀行に
ソニー銀行が、勘定系を含むほぼ全てのシステムをAmazon Web Services(AWS)に移行する方針を発表。運用に要するコストや時間をカットし、業務を効率化する狙い。同行はクラウド活用を進めており、2013年から社内システムや周辺系システムをAWSに段階的に移行していた。
ネット銀行のソニー銀行は1月20日、勘定系を含むほぼ全てのシステムをAmazon Web Services(AWS)に移行する方針を発表した。2013年から、社内システムや周辺系システムをAWSに段階的に移行してきたが、より広範囲にわたるシステムをAWSに置き換えることで、運用に要するコストや時間をカットし、業務を効率化する狙い。
勘定系システムは、銀行口座における入出金の管理や残高の更新などを担っている。障害などで停止すると各方面に影響を及ぼす他、仕組みが複雑であるため、クラウド移行に慎重になる金融機関が多かった。そうした中でAWSは、東京リージョンに加え、21年初頭に大阪で通常リージョンを開設することを決めた。これにより可用性・耐障害性の向上が見込まれることから、ソニー銀行はAWSへの移行に踏み切ったとしている。
時期や詳細などは決まっておらず、これから詰めるという。ただ、既存のシステムをそのままAWSに移すのではなく、クラウドのメリットを最大限に活用できるクラウドネイティブな仕様に作り替えることはおおむね決まっている。具体的には、アプリケーションをマイクロサービス化してコンテナ上で稼働させたり、サーバレス技術を採用したりする予定だ。
ソニー銀行の福嶋達也執行役員は「当行は(東京リージョンに加えて)現行の大阪ローカルリージョンも利用しており、仮想サーバやバックアップなどで活用してきたが、利用できる機能が制限されていた。大阪での通常リージョン開設を機に、サーバレス系のサービスやコンテナをサポートするサービスなどをマルチリージョンで使っていきたい」と語った。
ソニー銀行は01年に創業。ベンダーがオーダーメイドで構築したオンプレミス型のシステムを使用していたが、13年からAWSを使い始め、初期費用とランニングコストを50〜60%削減した。19年からは財務会計システムに「Oracle EBS」を導入してAWS上で稼働させている他、CRM(顧客管理システム)にSalesforceを導入するなど、AWS以外のベンダーも含めたクラウドサービスを積極的に活用している。
今夏には営業店で使用する端末を、AWSが提供する仮想デスクトップサービス「Amazon Workspaces」に移行する計画もあるという(社内端末は移行済み)。今後も金融機関に固有の特殊な専用機を除き、クラウド活用をさらに加速させる考えだ。
福嶋執行役員は「クラウド活用を始めてから、われわれはクラウドファーストではなく、クラウドオンリーでモノづくり(システム構築)をしてきた」と語り、クラウドの採用を第一に考えるのではなく、クラウド利用を前提にシステムを設計してきたことを強調した。
さらに、19年夏にAWSで障害が発生したことにも言及し、「マルチリージョンに対応したため、障害についての懸念はしていない。オンプレミスよりも高い可用性が期待できるだろう」と前向きな見方を示した。
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