後発のOracle Cloudは、どうすればAWSやAzureに対抗できるか 日本市場での挽回策を考える(2/2 ページ)
2019年5月にクラウドデータセンターを東京に開設し、Oracle Cloudの国内展開を本格化した日本オラクル。同年8月までに500社が東京リージョンの利用を開始したが、AWSやAzureからは市場シェアで大きく引き離されている。同社は今後、どうすればライバルベンダーに追い付けるのか。
成長にはパートナーの拡大が不可欠だ
パートナー戦略について、日本オラクル 執行役 副社長 アライアンス統括の石積尚幸氏は「もともとOracle製品を組み込んだ提案に強みを持っていたアシストや日鉄ソリューションズなどでは、Oracle Cloudの優位性の理解がかなり進んでいる」と明かす。両社はOracle Cloudを活用した提案の「勝ちパターン」を既に見つけており、それを積極的に提案して実績を生んでいるとのことだ。
また石積氏によると、Oracle Cloudを基盤としたクラウドネイティブなアプリケーション開発に積極的に取り組むパートナーも増えつつあるという。過去にあまり付き合いがなかったタイプだが、各社は積極的にクラウドサービスを調べ、自らOracle Cloudを試し、仕様を身をもって体感。提案活動に生かしているという。
一方で、過去に日本オラクルと一緒にハードウェアを提案してきたようなSI企業の動きは少し鈍いとみられる。ハードウェアやソフトウェアの再販ビジネスで利益を確保してきたパートナーを、クラウド型ビジネスの体制に変化させるのはなかなか難しいようだ。
こうした環境下で協力的なパートナー企業を増やすには、パートナーがOracleと組んでビジネスを行うハードルを下げることが重要だ。そのためには、無償でアプリケーションの構築・テスト・展開ができるトライアルサービス「Oracle Cloud 無償ティア」を今まで以上に訴求するなど、パートナーに向けた地道な情報発信も欠かせないだろう。
日本オラクルの戦略は奏功するのか
経営陣が述べた通り、現代の日本には、高齢化や2025年の崖といった課題が存在する。それらの悪影響を避けるべく、「デジタル変革を早く進めたい」と望む企業は多い。その選択肢として「クラウドを使いたい」というニーズも確実にある。
条件はそろっているため、日本オラクルがパートナー戦略を強化し、ビジネスチャンスを逃さなければ、国内でOracle Cloudのシェアを広げられる可能性はありそうだ。
Oracle Cloudは国内市場で、AWSやAzureと並ぶ存在になれるのか。今後も動向を注視していきたい。
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