電話でタクシー会社に尋ねるという難題
これはまいった。
ただ、手元にはタクシーのレシートがある。これは幸いだ。
急いでそこに書かれたタクシー会社へと電話をかける。
実は、筆者は英語で電話をかけるのがとても苦手だ。英語はそれなりにできると思っているが、音が悪くて聞き取りづらいと、とにかくコミュニケーション精度が劇的に落ちる。うるさい場所と電話取材は、とにかく苦手で避けている。
だが、今回は躊躇(ちゅうちょ)してもしょうがない。レシートにある番号にかけてみた。
案の定、電話の音質が非常に悪く、相手のいうことは聞き取れない。
辛うじてコミュニケーションしていくのだが、そこで大変なことが分かる。
レシートはあるのだが、運転手の切り方がぞんざいで、もっとも大切な「ドライバー名とドライバーのライセンスID」の部分がないのだ。
「じゃあ、乗った場所と時間、決済のクレジットカードの下四桁と料金から、なんとかドライバーを探してあげるわね」
電話の向こうで対応しているオペレーターの女性がそう言う。
それらはもちろん覚えているので、ちゃんと伝える。しかし、電話の音質が悪いこと、英語でのコミュニケーションであることから、ちゃんと伝わっているかどうかどうにも不安だ。
「乗車は確認できました。ただ、ドライバーとは、彼の乗車が終わらないと連絡がつかないので、あとから連絡します。1、2時間で終わることもあれば、明日になることもあります。電話番号を教えてもらっていいですか?」
そういわれたので、携帯の電話番号を教える。ここでも、電話の音質の悪さから、ちゃんと相手に伝わっているか不安だった。
そうこうしているうちに、会食の相手がやってきた。こちらがバタバタしているので、「何事か?」という顔をしている。
そりゃあそうだよね。
弾は当たったが、生きている
サイフをなくすというのはかなり致命的なことに思える。特に、お金がかかりがちな海外ではそうだ。
だがこの時、幸か不幸か、西田は「ギリギリ致命傷じゃない」くらいのレベルにとどまっていた。
まず、パスポートは無事。
次に、直前にクレジットカードを取り出していて、それはまだサイフに入れていなかったので、これも持っていた(ここで、サイフにクレカを戻してポケットに入れる、というルーティンを外してしまったのが敗因なのだが)。
3つ目に、直前の講演のギャラが「現金」だったので、手元には100ドル+ポケットにあった数ドルが残されていた。当座の現金はある。
4つ目に、スマホにはちゃんとSuicaをはじめとしたキャッシュレス決済が登録されており、その決済クレカは、サイフにはいっていない、手元にあるほうのクレジットカードだったこと。キャッシュレス生活にすれば当面なんとかなる。
さらに5つ目に、日本円が2万円ほど、ドルから入れ替える形でカバンの中にある。最悪現金が日本で必要になっても、こちらもなんとかなりそうだ。
サイフにはいっていた現金300ドル弱、それに各種会員カード、クレジットカード1枚にキャッシュカードにデビットカードは失われたが、「帰国までなんとかなる」「帰国しても基本キャッシュレス生活で数日なんとかなる」「大きな額の出費があってもクレカがある」という、まあなんというか、「弾はあたったが致命傷じゃなかった」的な状況だ。
とはいえ、アレな状況であることに変わりはない。
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