ジョブズが語っていたのは「10インチのiPod」
ソフト的なクリックホイールは、Appleが実装することはありませんでしたが、サードパーティーがApp Storeで公開し、すぐにAppleによって削除されました。仮想キーボード、10インチサイズ、SSDメモリあたりは合っていたようです。
スティーブ・ジョブズ自身が基調講演で明かしていたことからの推測だったのです。
Macworld San Francisco 2006の基調講演の40分付近からのGarageBandデモ。ここで、ジョブズが自らポッドキャストを作成するところがあります。そこで、彼はこんな言葉を録音しています。
Hi, I'm Steve. Welcome to my weekly podcast. Super secret apple rumors featuring hottest rumors of our favorite company. Next iPod will be a huge and over 8 pound 10 inch screen and also Apple is working with other companies to get iPod everywhere.
秘密は誰もが目にするところに置いておけ、ということでしょうか。8ポンド、3キロ以上の重さというので目くらまししていますが、10インチというのは初代iPadの画面サイズである9.7インチとほぼ同じ。この時点で開発中だったiPadは一時的に棚上げされ、翌年の2007年に向けてiPhoneの開発が裏で進んでいたというわけです。
現在、多くの鍵盤楽器やオーディオミキサー、ギターストンプはiPadを譜面、音色エディタ、レコーダー、ミキシングコンソールといった用途に使っており、その数は増える一方。ソフトシンセとしては、そこにない楽器はほとんどない状態です。
オルガン、ピアノ、エレキギター、ドラムマシン、シンセサイザー、MIDIシーケンサー、サンプラー、DAW。新しい音楽スタイルが生まれるたびに、それぞれの時代を象徴する楽器が登場しています。2010年代は何かと問われれば、ぼくは迷わず「iPad」と答えるでしょう。ジョブズがほかでもない、GarageBandのデモにその秘密をしのばせたというのも象徴的ではないかな、と。
米国での発売直後に“密輸”してもらって空港で受け取った初代iPadは、2011年の3.11とほぼ同時に配信されたGarageBandにより、ぼくの人生を大きく変えました。「GarageBandの達人」としてテレビに出たり、東京ドームで演奏したり。
最新のUSB-C搭載モデルではありませんが、10.5インチのiPad Proを2枚、GarageBandをはじめとする「楽器」として使っており、ライブで演奏したり、妻の歌声をフィーチャーした音楽制作に欠かせない「相棒」であり続けています。
初代iPadは音楽こそ奏でないものの、30ピンのケーブルをつなげて彼女の写真をスライドショーで映し続けています。
妻がベッドから友人の展覧会に参加できたのも、iPad mini(初代)があったからでした。
そんなiPadの小さな思い出話でした。あなたとiPadの10年はいかがでしたか?
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