「雑用扱いで名前もない」 データ分析の土台を支える“SQLを叩く人”の重要性を問い直す:これからのAIの話をしよう(データ整備人編)(3/3 ページ)
データ分析をする上で欠かせない「データ整備人」とは、どんな役割を担う人なのか。ないがしろにされがちなデータ整備人の仕事について、データ分析の専門家が解説します。
しんゆう:特に収集フェーズは「データがあればすぐにできるでしょ」と思っている人が多過ぎますね。今まで日本企業がデータ分析に真剣に取り組んでこなかったツケといえます。ビッグデータや人工知能など特定の言葉がはやると、経営層が「何かやれ」と現場に命令して、「できませんでした」となるのが毎回のオチです。言葉だけはやって、おのおのが自分のイメージで好きなようにその言葉を語っているんです。
データ分析については「そもそも何をするのか」という部分が抜け落ちている人が多いです。それは意思決定者だけでなく、分析者にも当てはまります。「データを使って何かやる」という所だけにフォーカスするのは、何か違うなと思っています。
松本:料理を作るシーンを見て「僕も何かの料理を作りたい!」と言うようなものでしょうか。食材に対する目利きや色彩感覚、盛り付けのセンス、食材の切り方などさまざまなスキルが要求されますが、そもそも何の料理を作るのかを決めないと適切に準備できません。
しんゆう:意思決定をする側が何を知りたくて、それに対して何をするべきかを考えないといけません。意思決定者の要求に基づいて、データを収集し、分析、洞察をして伝達する。これらを1つのプロセスで捉えないといけないんです。
現状は「社内にノウハウは無いけど、とりあえずデータはあるし何かできるだろう。あとはよろしく!」と、全くこのプロセスを無視したデータ分析が多いです。データ分析系のノウハウは、表に出ないですからね。エンジニアと比べてノウハウを発信する人が少ないのも関係しているかもしれません。
日本企業とデータ分析の根深い問題
松本:しんゆうさんは、2010年代にビッグデータが流行する前から、フリーランスとしていろいろな企業のプロジェクトを手伝っていると聞いています。企業のデータ分析の取り組みについて、変化を感じることはありますか。
しんゆう:データを使おうと考えている企業は増えていますが、具体性に欠けることが多いです。データを使いたいが、何をどう使えば良いか分からない。データの蓄積や分析に関する技術やツールはあるのに、使う側がそれに追い付いていないんですね。
松本:その問題を解決するには、経営層がもっとデータ分析について勉強しないといけないのでしょうか。
しんゆう:そもそも日本企業は、戦後長らくデータ分析に真剣に取り組んで来ませんでした。それを急に方向転換しろと言っても、難しいでしょう。今までそれがなくても企業として何とかやってこれたわけですから。
例えば、高齢者はこれまでスマートフォンを使わなくても生きてこれたので、若い世代と比べるとスマホの利用率は少ないです。データ分析(への意識)については、若者から高齢者まで同じような感じなので、突然大きく考え方が変わることはないと思います。
松本:ネット上で影響力の大きいデータサイエンティストたちが、Twitterやブログなどでその問題を指摘してもなかなか広がらないですよね。私も執筆活動や講演などでデータ分析に関する情報を発信していますが、それを痛感します。
しんゆう:そもそも情報はサブ的な立ち位置で、メインストリームにはならないんです。われわれのようにデータ分析に関わる人たちは、世間的には少数派ですから。ただ、(データを扱うためのリテラシーは)基礎教養の1つとしてみんなが持っておくべきだと思います。基礎的なリテラシーが無いから、データに振り回されてしまうんです。今は、データを扱うための技術が発展しただけで、使う側の人間が進化していない状況です。この現状が変わるとしたら、何世代か後になるでしょう。
(後編につづく)
著者プロフィール:松本健太郎
株式会社デコム R&D部門マネージャー。 セイバーメトリクスなどのスポーツ分析は評判が高く、NHKに出演した経験もある。他にも政治、経済、文化などさまざまなデータをデジタル化し、分析・予測することを得意とする。 本業はインサイトを発見するためのデータアナリティクス手法を開発すること。
著者連絡先はこちら→kentaro.matsumoto@decom.org
著者より単行本発売のお知らせ
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