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フェイクニュースで株価暴落も AIの“超高速取引”に潜む危険性(2/3 ページ)

金融業界では、HFT(高頻度取引)に代表されるように、コンピュータが株式市場などで自動取引する動きが活発化してきている。高速取引にはメリットもあるが、思わぬ落とし穴もある。HFTの時代に何が起きているのかをまとめた。

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 有名なものは、「シリア電子軍」を名乗るシリアのハッカー集団によるハッキングでしょう。シリア電子軍は、米Washington Postや米CNNなどのサイトにサイバー攻撃を仕掛けたことなどで話題になりましたが、13年に米Associated Press(AP通信)もその標的になりました。

 シリア電子軍は、乗っ取ったAP通信のアカウントで「速報:ホワイトハウスで2度の爆発。オバマ大統領が負傷」というツイートをしました。この速報はいわゆるデマでしたが、HFTによってすぐさま大量の株が売り出され、一時的にダウ工業株平均が急落。数分間で元の水準に戻りました。

 AP通信では速報を流すときは「BREAKING」の文字をツイートの文頭に付けるのですが、この偽ツイートでは文頭が「Breaking」となっていました。しかしながら、HFTの時代では人間がこの違いに気付いて対応するような時間はありません。この事件では、株式市場全体で1360億ドルもの損害が出るなどし、市場は大混乱となりました。

 AP通信はすぐにTwitterアカウントがハッキングされた事実を公開し、ホワイトハウスもフェイクニュースへの対応をしましたが、膨大な数のフォロワーを抱えるAP通信アカウントのツイートは瞬く間に拡散されていきました。一連の対応は米国だからこその非常に迅速なものであったと思いますが、今後もこうしたサイバー攻撃によってHFTの仕組みが悪用される可能性は十分にあるでしょう。

HFT時代に求められる能力とは

 アルゴリズム取引にはいくつかの種類がありますが、このように市場を変動させるようなニュースや事件に対応し、価格変動を予測して自動的に取引を行うものを「ディレクショナル・アルゴリズム」と呼びます。今回の事件は、このディレクショナルアルゴリズムが想定以上に売買を推し進めた例といえます。

 株式市場における自動取引のアルゴリズムに強化学習が使われることもあります。このようなアルゴリズムを使ったbotは超高速に株価の上下動を処理します。この取引の判断の正確さや速さでは、人間は既にコンピュータに及びません。

 しかし、フラッシュ・クラッシュやシリア電子軍のハッキングの例から分かるように、超高速な自動取引にはさまざまな危険が潜んでおり、実際に各国で規制強化についても議論されています。

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