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インタビュー

新型コロナで苦しむ飲食店を救えるか 食事代の先払いサービスを生んだ音楽プロデューサーの思い(1/2 ページ)

食事代をネット上で先払いすることで、新型コロナウイルスの影響で売上減が続く飲食店を応援できる「さきめし」。福岡県に本社を置くベンチャーGigiが3月にそんなサービスを始めた。同社の代表取締役を務めるのは、安室奈美恵さんの「HERO」の作詞・作曲・編曲を手掛けた音楽プロデューサーの今井了介さん。今井さんに開発の経緯を聞いた。

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 食事代をネット上で先払いすることで、売上減が続く飲食店を応援できる――。福岡県に本社を置くベンチャーGigi(ジジ)は3月頭に、そんなサービス「さきめし」を始めた。新型コロナウイルスの影響で資金繰りに苦しむ飲食店を支援する狙いで、支払いは半年間有効。客は新型コロナが収束した後に、実店舗で食事できる。開始から1カ月間で、コース料理からビール1杯まで約8000件の注文を集め、約400万円を全国の加盟店に配ることができたという。

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飲食店に先払いできるサービス「さきめし」

 Gigiの代表取締役を務めるのは、TEEさんの「ベイビー・アイラブユー」の共同作曲、安室奈美恵さんの「HERO」の作詞・作曲・編曲を手掛けた音楽プロデューサーの今井了介さん。今井さんは、音楽だけでなく「人間の衣食住を応援したい」との考えから2018年に同社を創業し、楽曲制作と並行してフードテック事業に取り組んできた。「新型コロナの影響で多くの飲食店が近いうちになくなるかもしれない」という危機感などから、さきめしを始めた。

売上金は1週間以内に振り込み

 さきめしは、客がスマホアプリ上で店舗とメニューを選び、クレジットカードで決済すると、最短で1週間以内に店舗側に売上金が振り込まれる仕組み。支援した店舗が閉店しても返金しない決まりで、あくまでも飲食店の支援にこだわっている。かなり“店舗ファースト”なサービスだが、それでも多くの注文が寄せられているという。

 さきめしは、Gigiが19年10月に始めたサービス「ごちめし」が基になっている。ユーザーがアプリ内で事前決済すると、遠方にいる家族や友人に食事をおごれる仕組みで、約880店舗の加盟店を獲得している。さきめしはごちめしの一機能という位置付けで、新型コロナの感染拡大を受け、ユーザーが自身に食事をおごれるようにした。

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「さきめし」の仕組み

店舗からの加盟料・手数料はなし

 今井さんは「さきめしはコロナに便乗するつもりで始めたのではなく、店舗の役に立ちたいと思っている」と話す。自社の収益アップではなく、売上減に苦しむ飲食店を応援することが最大の目的だという。

 その言葉通り、ごちめし・さきめしでは、Gigiは店舗から加盟料や手数料を取っていない。その代わりに、ユーザーの食事代に10%の手数料を加算し、クレカ決済手数料を除いた6.5%を取り分としている。飲食業に関連するWebサービスで、店舗から料金を徴収しない例は極めて珍しいというが、「コロナで大変な店舗に長く使ってほしい」「店舗を疲弊させたくない」(今井さん)との思いで設計したそうだ。

 「意外かもしれないが、音楽制作は薄利。ヒット曲を出しても、ストリーミングサービスの1回の再生や、CD1枚の売り上げに伴う印税収入はかなり少ない。それでも、楽曲がヒットして多くの人に知ってもらうとうれしい。フードテックの両サービスも同じ思いで作っている」(今井さん)

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