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安倍首相の「うちで踊ろう」動画、”事前確認なし”は問題か?(3/3 ページ)

星野源さんの「うちで踊ろう」動画とコラボした安倍晋三内閣総理大臣の動画が批判を浴びた。首相が投稿したのは星野さんのオリジナル動画を使った動画で、著作権侵害だとの声もある。法的にはレッドカードが出そうな案件だが、今回の投稿に問題はあったのだろうか。

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SNSへ投稿された音楽に対する考え方は?

 SNSに投稿された音楽の権利について確認しておきたい。JASRACやNexToneといった著作権管理団体は管理楽曲に関して、一般ユーザー自身が楽曲を演奏する“演奏してみた”動画を、動画共有サイトなどに投稿するのは基本的に認めている。

 これは、著作権管理団体と動画共有サイトの運営者が包括的な利用許諾契約を締結しているからだ。この契約を結んでいるサービスでは、管理楽曲の演奏してみた動画を投稿してもいいことになっている。

 JASRACの場合、「利用許諾契約を締結しているUGCサービスの一覧」に、演奏してみた動画をアップロードできるサービスとして、YouTubeやニコニコ動画などをリストアップしている。

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利用許諾契約を締結しているUGCサービスの一覧

 NexToneの場合も、「FAQ」ページの「YouTubeなどの投稿型の動画配信サービスにNexTone管理作品を利用した動画を投稿する場合の利用申請方法や使用料は?」という項目で、同様の対応を取ると示している。

 ただ、JASRACやNexToneで管理楽曲データベースを検索しても「うちで踊ろう」は登録されていない。この場合、楽曲の扱いはどう考えればいいのだろうか。

 おそらくは、「うちで踊ろう」の演奏してみた動画の投稿も権利侵害にはならないと考えられる。

 というのは、星野さん自身や、星野さんの楽曲を管理する音楽出版社が、JASRACなどと包括的な信託契約を結んでいる場合には、「星野源」の名前で公表した作品は自動的にJASRACなどの管理下に置かれることになるからだ。

 ただし、TwitterはJASRACの締結先に含まれていない。Twitterに、権利者の了解を得ずに楽曲を使用した動画をアップロードすると、著作権侵害を指摘される可能性があることは覚えておこう。

星野さんの真意はどこにある?

 Twitterなどでは、音楽の政治的な使い方に対する批判もあるが、この部分について、星野さんの真意は測りかねる。安倍首相のコラボ動画の件で星野さん側からの投稿コメントは、次の1件だけだ。

 「一つだけ。安倍晋三さんが上げられた『うちで踊ろう』の動画ですが、これまでさまざまな動画をアップして下さっているたくさんの皆さんと同じように、僕自身にも所属事務所にも事前連絡や確認は、事後も含めて一切ありません」

 「だから結局何?」と突っ込みたくなる投稿で、読み手の心情や思想次第でどちらにでも受け取れる書きっぷりだ。

 おそらく、星野さん自身もそれを狙ってこの文章を投稿したのであろう。「一切ありません」という締めの言葉に、不快感を示しているようにも見えるが、受け手側にいる人間には判断できない。そして、書き出しの「一つだけ」からは、「この件は、もうこれ以上何も言わない。おわりね」という強い意志も感じる。

【編集履歴:2020年4月23日午前11時20分 事実に基づいて本文の表現を一部修正しました】



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