海外で進む「オンプレミス回帰」 その背景に何があるのか(3/3 ページ)
2006年に「クラウド」という概念が登場した後、パブリッククラウドは多くの企業に普及した。だが昨今はその流れに逆行し、海外を中心にオンプレミスに回帰する現象が起きているという。その理由とは――。
出発がなければ「回帰」もない
こうした海外の新しい傾向を踏まえて、日本企業の中にも、クラウド移行の計画を見直すところが出てきているとの指摘もある。せっかく移行したクラウドを元に戻すなら、最初から移行しないでおこう、というわけだ。
しかしオンプレ評価の流れを、オンプレミスへの「回帰」と表現していることに注意したい。海外ではこの流れをCloud Repatriation(日本語では「脱クラウド」などと訳される)と呼ぶことが多いが、Repatriationとは帰還や送還などに使われる言葉で、文字通り「どこかに出掛けていてそこから戻って来る」という意味だ。つまりオンプレ回帰とは、クラウドに挑戦し、良しあしを見極めた上でオンプレを再利用するという現象を指している。一度も挑戦せずにオンプレに固執するという意味ではない。
言葉遊びのように感じたかもしれないが、海外企業は知識と経験を得た上でオンプレに戻るのだという点に留意してほしい。日本企業のITへの取り組みが、海外企業に比べて数年から10年程度は遅れているといわれるようになって久しいが、クラウド利用についても日本企業は大きく遅れている。
海外企業がオンプレに戻ってきているからといって、クラウド移行の流れを緩めるようなことになれば、周回遅れなのにトップを走っているような気分になるものだろう。そうした誤解を解いておかないと、オンプレ回帰の次の波が来たとき、日本企業は再び海外企業の背中を追うことになってしまうはずだ。
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